監督:ジョン・カーペンター
1998年作品
知ってる人は知っている、知らない人は全然知らない(笑)ホラー界のある意味では大御所、ジョン・カーペンター監督の最新作。(この人とジョン・ランディス監督を合わせて「2大ジョン」とかいいますな(笑))98年度の東京国際ファンタスティック映画祭では、オープニング・アクトとして上映されました。その筋では超有名な監督ではありますが、ヴァンパイア(吸血鬼)という、このジャンルでは定番とも言える題材を取り上げたのは実はこれが初めて。イメージ的にもアイデア的にも既にネタは出尽した感がありますが、果たしてどのように料理してくれるのか...と思っていたら、期待に違わず実に彼らしい特徴のある作品がお目見えしたのでした。何といっても、原題が「John Carpenter's Vampires」ですからねぇ(笑)。
物語の舞台は現代のアメリカ。現代にしぶとく生き残り続ける伝説の吸血鬼一族と、モダンな装備と固いチームワークを武器に彼らと闘うワイルドなスレイヤーズ(吸血鬼始末人軍団)の死闘が繰り広げられます。ストーリーは、はっきり言ってそれだけ。シンプルそのものです。
なんだ、それだけじゃこれまでの吸血鬼モノと変わらないじゃん...と思うのはまだ早い。これまでの吸血鬼モノ、をちょっと思い浮かべてみて下さい。登場する吸血鬼はだいたい色白黒髪の超美形、全身黒服でなにやら貴族的な雰囲気。被害に遭うのはこれまた超美女ばかり。対するは、神への信仰厚く威厳に満ちた老神父。で、舞台はヨーロッパの古びた洋館とか...まぁこんなとこですよね、一般にイメージする吸血鬼モノって。こうしてみると、吸血鬼という題材はホラーの中でも限りなくファンシーでお伽噺に近い、言い換えれば限りなく嘘臭い(嘘ですけどね(笑))部類にカテゴライズされるんですね。
でも、カーペンター監督描くところの吸血鬼はちょいと違います。色白黒髪に黒服、という吸血鬼は確かに登場するんですが、これは親玉のみ。他のザコ吸血鬼はみんな乞食のような格好で、体中に泥や血反吐を張り付かせたままよだれを飛び散らせ白目を向いて襲い掛かってきます。まともに人語を話すシーンも、親玉のみ。しかも、この親玉も全然美形じゃないし(笑)直立不動で空飛んだり車の上に飛び乗ったりと、勇ましいの何の。これまでの吸血鬼が漂わせていた「退廃的でオシャレな雰囲気」など微塵もありません。そこに描かれているモノは、キャラクターとして独自のストーリーを持ち得たり女性の固定ファンがついたりするモノなどでは決してなく、まさに「モンスター」そのものなのです。これ、当たり前のようですけど、吸血鬼がこういう突き放した視点で描かれたのって、この作品が初めてじゃないかと思います。そんな、いかにもモンスター然とした吸血鬼に対抗するのは、いつも仏頂面下げてもさもさと歩き、やたらと「fuck」と「shit」を連発する、男臭くてイカレたスレイヤー。子供の頃に両親を吸血鬼に惨殺され、教会権力の手でスレイヤーに仕立て上げられる、という過去を背負ったキャラクターで、これまでのカーペンター作品登場キャラクターと比較すると、割と人間的に掘り下げられている感無きにしもあらず、なのですが、それはあくまでも「カーペンター作品の中では」という話。いくら悲惨な過去があるといわれても、どうみても教育程度の低い乱暴者にしか見えないんですよね、このキャラクターが(笑)。他のスレイヤー達も似たり寄ったり。つまり、この作品は吸血鬼側にもスレイヤー側にも感情移入することがないまま、ひたすら客観的に両者の闘いを描写し続けるのです。
その意味では、これほどクールかつドライなホラーというのはないですよ。そもそも、どのキャラクターにも感情移入できないんですから、怖さもそれほどではありません。アクション・シーンのドキドキハラハラ感はたっぷりありますが、作品中のキャラクターと一緒になって恐怖を味わう、ホラーならではの愉しみはこの作品にはありません。むしろ、純然たるアクションものとして楽しめる作品です。キャラクターの描写同様、アクションの描写も実に淡々としたものですが、そこは昔から職人気質なカーペンター監督、ドライながらも骨太で見ごたえのあるアクション・シーンをこれでもかと見せてくれます。他にも、吸血鬼を仕留めてから白昼の光に晒すまでの緊迫したやりとりや、吸血鬼達が地中から登場する馬鹿馬鹿しいぐらい大げさなシーン(笑)など、絵的にエキサイティングな見どころ満載です。中には「おいおい、それはないだろう」ってなシーンも結構ありますが(笑)そこは笑って見逃して、作品全体に流れる汗臭いカッコよさを楽しむのがこの作品の見方。たまにはこういう単純なのもいいですよ。