CYBER CITY OEDO 808 〜大人のための荒唐無稽
監督:川尻善昭
オリジナル・ビデオ・アニメーション(全3巻)
今回のレビューは番外編。映画ではなく、オリジナル・ビデオ・アニメを取り上げてみました。一昔前は、TVでも映画館でも流さないオリジナル・アニメなんて儲かるの?と思われてましたが、今やレンタルビデオ屋に行くと、数えきれないぐらいの作品が並んでますね。ということは、それなりに人気のあるジャンルなんでしょうね。・・・が、このタイトル、聞いたことのある人います?実は私も全然知りませんでした(笑)。「何か肩の凝らないくだらないモノが見たいなぁ」というものすごく失礼な動機で、はなから期待せずにレンタルしてみたのが、たまたまこのタイトルだったんです。ところがこれが、いい意味で期待を裏切る出来のいい作品。思わぬ掘り出し物だったので、映画ではありませんがここで紹介します。まぁ、出来がいいとはいえアニメですから好き嫌いの分かれる分野ではありますが、もしレンタルビデオ屋の店頭で見かける機会がありましたら、「おぉ、これか」と思って下さい(笑)。
舞台は西暦2808年の東京・・・この時代では「オーエド」と呼ばれている大都会。都市はネットワークの網と超高層建築物に覆い尽くされて繁栄を謳歌しているが、犯罪の種だけはなくならない。より高度に複雑化した犯罪に対処するため、警察当局は優れた能力を持つ重犯罪人を「特殊猶予」扱いで釈放し、その見返りに彼らを当局側の手先として働かせ、他の犯罪者を狩らせる犬に仕立て上げた。「軌道刑事」と呼ばれる彼らは皆取り外し不可能な首輪を装着され、当局の命に背いた場合はスイッチひとつで首輪もろとも爆破されるが、手柄を立てれば減刑され自由への扉が近づいてくる。物語は3人の刑事、コードネーム:センゴク・ベンテン・ゴーグルを中心に繰り広げられる。
とまぁこのように、舞台設定は頭が痛くなるほどベタベタ(笑)。東京が「オーエド」と呼ばれているところからして「ひぇ〜」なんですが、3人の上司の名前が長谷川十蔵、アシスタントの女性(一応ヒロイン役、でもほとんど活躍の場なし(笑))が城野内京子、通称お京、3人の共通の武器が十手。ここまで時代劇臭い基本設定を整えておきながら、ストーリーの方は至ってストレートなSFアクション。なーんで時代劇臭くする必要があったんですかねぇ(^_^ゞ 主役をはる3人の方も、センゴクはバリバリのリーゼントに真っ赤なブルゾンのヤンキー、ベンテンは「なにもそこまで」ってぐらいの古典的美形、ゴーグルはサングラスにモヒカン刈りの大男。しかも演じる声優陣はそれぞれ石丸博也、塩沢兼人、玄田哲章と来たもんだ(笑)。
ここまで読めば、ちょっと前のアニメに詳しい人なら何となくわかると思いますが、この作品は10年近く前に制作された、かなり古いものです。設定もキャストもベタベタ、今のアニメと比較すると確かに古臭さを感じます。が、古いものが必ずしも陳腐化するとは限らないことは、映画好きならご存知の通り。この作品も、一昔前のアニメが持っていた良い点が発揮され、なかなか憎めない作品に仕上がっています。何と言っても特筆すべきは、作画レベルの高さ。特に人物デッサンの正確さには、昨今の美少女アニメの狂いまくったデッサンに辟易している我が身にとっては感動さえ覚えましたね。昔のアニメは丁寧に作られていたんだなーということが実感できます。他にも、戦闘シーンや超高層ビルの描写などに見られるキレのいいカメラワーク、ガジェットのデザインセンスの良さなど、今でも全く古びていないところはさすが。論理的な破綻は随所に見られるのですが(高軌道エレベーターが極地以外に設置されてるってところが、SF好きな私には一番気になった(^_^;))、それを補ってあまりある完成度の高さです。第2巻に登場する生体兵器「モルコス」のデザインとか、いいですねぇ。
作画レベルと並んでもう一つの古びないもの、それは作品全体に流れる雰囲気です。こればっかりはモノを見ていただかないことには実感できないのですが、簡単に言えば「コブラ」と「映画版パトレイバー」を足して2で割ったような感じ。・・・と思っていたら、監督の川尻善昭氏は「コブラ」の監督も務めた人だったんですね。道理で納得、のドライでアダルトなムード。登場キャラクターはみんな大人の男と女ばかり、上に書いたキャラ紹介だけ読むとベタベタなイメージしかわかないんですが、実際に作品世界の中で動く彼らは実にクールでカッコいいです。絵とムード、という基本中の基本がしっかり押さえられていますから、あとはその上で刑事が十手振り回そうが東京に高軌道エレベーターを立てようが何となくカッコよく見えてしまう、まさに川尻マジック。荒唐無稽そのものではありますが、この雰囲気を楽しめる人なら安心して見ていられる作品です。考えてみると、「コブラ」もそんな作品ですよね。
どうも最近のアニメというものが生理的にダメで、近ごろは全くそちら方面がご無沙汰なのですが、時々こういう作品が紛れているから侮れないなぁ。個人的には、「攻殻機動隊」以来の久々のヒット。これからはアニメの棚もちゃんとチェックします、はい(^_^ゞ