ガメラ3邪神〈イリス〉覚醒 〜「怪獣映画である」ということ

監督:金子修介

1999年作品

 怪獣モノです。「♪ちゃちゃちゃ〜ん、ちゃちゃちゃ〜ん、ちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃ」の名テーマ曲とともにお馴染の、あの「ゴジラ」をはじめとして、日本映画界が得意とするジャンルの一つであります。が、見たことない人、興味のない人、すごく多いんじゃないでしょうか。かくいう私もこのジャンルは全くの素人でして、それなりに興味はあったんですがどうも手を出せずにいました。どうしても、「破壊しまくって爽快感をあおるだけのお子様向け映画」ってイメージがこびりついちゃってぬぐい取れないんですよ、これが。このジャンルの特撮技術が素晴らしいってのは確かに認めますが、それだけってのもねぇ。てな感じで未挑戦のジャンルでしたが、この「ガメラ3」は現在の日本の特撮技術&CG技術の最先端を走っているすごい作品だというので、まぁ話の種に一度見ておくかと思ってレンタルしてきました。技術面、確かに素晴らしかったです。感動しました。が、技術面以上に感動したのが、日本の怪獣映画は完全に大人向けに作られている、という事実を身をもって体感できたことです。

 物語は、過去のガメラシリーズから連綿と続いています(でも、ガメラ1や2を見ていなくても充分楽しめます)。前回のガメラの闘い、対レギオン戦で、東京の街に現れたガメラに家と両親と愛猫を踏みつぶされた少女、綾奈が中心となって、今回の物語は紡がれていきます。孤児となった綾奈は奈良の山村に住む親戚の家に引き取られますが、ガメラに両親を殺された恨みのために誰にも心を開こうとしません。そのせいか、村の少女たちのいじめに遭い、彼女にひそかに想いを寄せる同級生の少年の気遣いさえも、かたくなに拒み続けます。そんな彼女が、村奥の洞窟で出会った謎の生物。ひとりぼっちのこの生物に共感を抱いた綾奈は、ガメラに殺された愛猫と同じ「イリス」という名前を付けて、大切に育てます。「ガメラを殺して。仇を取って」と念じながら...

 怪獣映画を見るたびに、たぶん誰もが思うであろう疑問。「人や車をなぎ倒し街を火の海に変えながら敵と戦う怪獣は、本当に正義の味方と言えるのか?」この「それを言っちゃおしまいよ」な、でも怪獣映画というジャンルが潜在的に抱えている難問に真っ正面から挑んだのが、この「ガメラ3」なのです。ガメラのタイトルに添えられている英文は「THE GUARDIAN OF THE UNIVERSE」。人類社会を滅ぼす本能を持つ謎の怪鳥・ギャオスと闘う「世界の守護者」と位置づけられているのがガメラです。しかし、それはあくまでも結果オーライの話。ガメラがギャオスを撃退した後には、綾奈のような被害者が大勢残されるのです。「ガメラを殺して」と念じながらイリス(実はギャオスの変異体)を育て、イリスと神経結合することによって京都の街を火の海に変えてしまった綾奈。彼女を責めることは、きっと誰にも出来ないはずです。

 ガメラやギャオス、イリスが現れるたびに、攻撃目標をころころと変えて結局何も撃退できない自衛隊。「滅亡よりももっと悪い未来が待っているのなら、人類はギャオスに滅ぼされるべきだ」とうそぶくエキセントリックなプログラマー、倉田。日本を救う一族の末裔として政府の手先となりながら、何の力も発揮できぬままガメラに押しつぶされる朝倉。そもそもガメラとは、ギャオスとは何か? 何が正義で何が悪なのか? 数多くの答えの出ない問いを抱えながら、物語は疾走し続けます。そこには、子供向けの単純な爽快感などありません。怪獣そのもののアイデンティティさえ崖っぷちに立たせてしまう、実に重い問い掛けが全編を通じて底辺に流れているのです。イリスとの激戦を何とか勝ち抜き、イリスの胎内に取り込まれていた綾奈を助け出すガメラ。綾奈をじっと見守るその視線は、たしかに「世界の守護者」たる静かな優しさに満ちています。しかし、ガメラは本当に人間のために闘っているのか? ギャオスの選択こそが地球を救うのではないか? その問いはそのまま、「人間とは地球にとって何なのか?」という問いに直結します。息付く間もなく現れるギャオスの大群に立ち向かうため、燃え盛る京都の街をゆっくりと踏みしめ進むガメラ。その足下には、間違いなくガメラのせいで死に至った何千、何万もの人々の屍が、そして第二、第三の綾奈がいるのです。この印象的なシーンをラストに、物語は未完のまま、いっさいの答えを明示せずに幕を閉じます。

 もちろん「怪獣映画」ですから、子供が見ても単純に面白いシーンは随所にありますし、そうでなければ怪獣映画ではないでしょう。しかし、ただ「怪獣が出てくるだけの映画」ではなく、「怪獣が出てくることによって何かを語りかけてくる映画」それこそが、日本の怪獣映画なのですね。子供が見ても大人が見ても、なにかしら重いものが心に残る、そんな考えさせられる作品です。あの「ウルトラマン」シリーズも、初期の作品群は非常に重いテーマを扱ったものが多かったですよね。これはもう、子供に独占させておくには絶対に惜しいジャンルです。ハリウッドのでかいトカゲには絶対真似できませんよー(笑)。

 もちろん、日本が世界に誇る映像技術もこれでもかの百花繚乱状態、ガメラとイリスの空中戦シーンは何度もビデオを巻き戻して堪能してしまいました。(この空中戦シーン、100%CGなんだそうです。ひぇー)イリスに背後をとられて焦る2機の空自F−15の間に、ぬっと出現して咆哮するガメラのしびれるカッコよさ! 満月の光を背に、白く輝く雲海の上にふわりと浮かび上がるイリスの眩暈がしそうな美しさ! お世辞抜きで鳥肌が立つ名シーンのオンパレードです。ガメラシリーズお家芸の「街並大爆破」も健在、渋谷の駅前がどっかんどっかん爆発します。実際の街並をもとに合成・モデリングされているので、「あっ、これはあの辺りだな」と思いつつ見ているとかなり爽快(笑)そんな映像美を楽しみつつ、ガメラが私たちに問いかけてくる何かも感じ取っていただければ、この怪獣映画が傑作である所以をご理解いただけるのでは、と思います。日本映画、まだまだ捨てたものじゃありませんよ。

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