このお話は。
『愛ある限り』発行のプリンタ誌”地球渡り”というお話の設
定になっています。
眞魔国を離れ、地球を選んだユーリがヴォルフを伴うことを希
望し、
ヴォルフもそれに応えますが、その代償としてヴォルフは眞魔
国での
記憶を喪い、地球に生まれ育った者としてユーリと再会します
。
なのでヴォルフには、普通に地球での家族がいます。
今回は、月子さんへの贈り物、ということでサイト出張編です
(笑)
栗拾い
「なあヴォルフ。栗って好きか?」
学校帰り。
いつものように一緒に下校しながら、おれは甚だ唐突だと
自分でも思う質問をした。
それにはちゃんと訳がある。
田舎のじいちゃんとばあちゃんが、栗拾いしに来ないかって
言って来たのは昨日の夜。
おふくろは速攻賛成でこう言った。
『ちょうど連休あるし、ヴォルフちゃんと行ってらっしゃいな
。』
おふくろの言う連休は明日からの3日間。
今日誘って明日行きましょうなのは余りに唐突だとは思ったけ
ど。
ヴォルフと栗拾いに行きたいと思ったのも事実で。
「もう、何か予定あるか?」
聞けばヴォルフは嬉しそうな笑みと共に首を横に振った。
「栗拾いか。ぼくは初めてだ。よろしく頼む。」
そう即答してくれた。
「おれもそう上手いわけじゃないけど、一緒に楽しもうな。」
抑えようもなく気持ちが上昇していく。
ヴォルフと居ると感じる温かさとか幸せとか。
おれと同じようにヴォルフも感じてくれていればいい。
そう思いながら、おれはヴォルフと明日の予定を相談してから
家に戻った。
「凄い・・・随分たくさん落ちているものだな。」
山に入って、栗林になっている一画に辿り着いた途端
ヴォルフはそう言って呆けたように地面を見つめた。
その姿は、汚れてもいいように、ってばあちゃんが貸してくれ
た
もんぺみたいな長ズボンとシャツ。
それに軍手。
言ってみれば、思い切り農作業スタイル(女性版)。
でもそれも、ヴォルフが着ると凄く可愛くて。
その姿を見た周りの反応が、
決しておれの目が腐っているわけじゃないことを証明してくれ た。
まあ、それはそれで複雑なんだけど。
なんて心狭いことを思っているおれの出で立ちは作業服の上下
。
自分で言うのも何だけど、おれガテン系もいけるかも知れない
。
・・・・・外側だけだったら。
「わ、凄いな!」
思ってたら、再びヴォルフの凄いが聞こえた。
今度の凄いは、栗のいがに向けられたものらしく
ヴォルフはしきりに足でいがを開こうとしてる。
「上手くいかないものだな。」
教えてもらった通りにやっているつもりなのに。
そう呟きながらも、楽しそうな笑みを浮かべておれを見た。
「え?そんなに難しい?」
言いながらおれもヴォルフと同じようにして。
「・・・・ずるいぞ、ユーリ。」
あっさりと開いたいがを見つめてヴォルフが言う。
「器用さの差かな?」
わざとそんな風に言えば、むきになったヴォルフが
必死にいがを開こうとするけれど、いがに逆襲されたりして
難攻してる。
そんなヴォルフも可愛い、なんて思って見てたら不意にしゃが み込んだ。
「ヴォルフ!」
何をしようとしてるのか判ったおれは、
今にもいがに触ろうとしてるヴォルフの手を慌てて掴む。
「駄目だろ。」
言えばヴォルフがはっとしたようにおれを見た。
その澄んだ瞳に見とれながら、おれはそんなヴォルフを
凄く可愛いと思う。
楽器を演奏するヴォルフは、とても指を大切にする。
なのにおれと居る時。
ヴォルフは時折そういう自分を忘れるような気がする。
「ありがとう、ユーリ。」
素直に出る言葉。
いつだったか、ユーリと居ると凄く楽しくて自分の人生
このためにあるのだと感じることがある、なんて
本人無自覚のまま、直球ストレートに言ってくれたことがある
けど。
そんなとき。
そして、こんな風におれだけを見つめるヴォルフの瞳を見ると
き。
おれは、あの国を思い出す。
「出来た!」
再び足でチャレンジし、そうっと栗を取り出したヴォルフが
その栗をおれへと示して満開の笑顔を浮かべた。
おれと居るために、他のすべてを捨ててくれたヴォルフ。
だからおれは、お前におれの全部をあげるよ、なんてひとり思
って。
「ユーリ?顔が赤いぞ。疲れたか?」
ヴォルフの手を額に感じた。
「え?夕陽のせいだろ?」
その優しい手から逃れるように身体を捻りながら言えば。
「・・・・・・・まだ陽は高い。」
ヴォルフの、更に怪訝になった声が返った。
「ほらヴォルフ!どっちが多く拾えるか競争な!」
だから、その言葉を言い終わらないうち、おれは新しいいがを
開いて。
「あ、ずるいぞユーリ!」
ヴォルフの興味を逸らせた。
ヴォルフ。
この一生をかけて、おれの全部をお前にあげるよ。
例えずっと音にする事が無くても。
それが、おれの一番の願いなんだ。
愛ある限り
甲斐 蒼子

愛ある限り 甲斐蒼子さまより、サイト開設のお祝いにて頂戴しました。
蒼子さん、ありがとうございました〜。感激です!
リク、無理を言ってごめんなさいです。
お目汚しですが、もんぺ三男を添えさせていただきました。
こんなんでどうでしょう?