「ジャック・タチの映画的宇宙」

 発行・エスクアイア マガジン ジャパン
 監修・坂尻昌平
 編集・遠山純生
 定価・1200円+税 

松村清志  





 現在「ジャック・タチ・フイルム・フェスティバル」と題して長篇4本、短篇3本が一挙上映されているジャック・タチの全作品世界を
多彩な角度から再検討した、1冊である。
 僕は上映作はすべて試写で見せていただいたのだが、本書を読むとそれらを又々、再見したくなってしまった。ジャック・タチの、
くめどもつきぬ魅力を「新発見」されてくれるガイド・ブックとなっている。
 さて、僕は常々、オーソン・ウェルズとグル・ダットが敬愛する2大シネアストだと公言しているのだが、そこに今、ジャック・タチを
加えてもいいとさえ思っている。彼らにはいくつか共通点がある。俳優・監督を兼業している事、その生涯にわずか10本足らずの監督作
しか残していない事、それぞれ「市民ケーン」(40)「紙の花」(59)「プレイタイム」(67)という興行的な大失敗作を撮った
“呪われた作家”である事、そして音の演出に秀でた“音響”の作家である事などだが、本書では特に“音響”の作家としてのタチに
対する論考や讃辞を、興味深く読んだ。それに関する書き手や語り手の人選も的確である。
 そうして、偉大なシネアストではあっても時として悲しみをもたらすその作風は決して万人向けとはいいがたいオーソン・ウェルズや
グル・ダットと比べて、見る者に幸福感をもたらすジャック・タチの作風は、どなたにも安心してオススメ出来るのである。本書はそんな
ジャック・タチの映画的宇宙の愉しみ方を、様々にアドバイスしてくれる好著なのだ。

 「ジャック・タチ・フイルム・フェスティバル」はヴァージンシネマズ六本木ヒルズにて上映中

 公式サイト
 http://www.zazifilms.com/tati

                            


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