「リトル・シーザー」
発行・小学館
著者・W・R・バーネット
訳者・小鷹信光
定価・1600円+税
松村清志
児童小説ではない。ギャング映画の古典にして個性派俳優エドワード・G・ロビンソンの出世作「犯罪王リコ」の原作である。
≪ポケミス名画座≫のラインナップにも入っているが、こちらが原題のままで1足早く出版されたわけだ。値段的には≪ポケミス名画座≫
の方が安くなるだろうが、こちらは翻訳が小鷹信光(こだか・のぶみつ)なのである。それだけで読んでみたいと思った。
小鷹信光、ハードボイルドとパルプ・マガジン研究の第1人者、そして松田優作の代表的TVシリーズ「探偵物語」の原案者である。
ちなみに小説「新・探偵物語」(刊・幻冬社文庫)も書いている。“日本にハードボイルドの夜明けは来るのでしょうか?小鷹信光さん”
40年前から本書の翻訳を念願としていたというだけに、訳者自身による巻末の「解説」が充実している。それによると作者のウィリアム
(W)・ライリー(R)・バーネットは「ハイ・シエラ」(41)「アスファルト・ジャングル」(50)の原作・脚本や「大脱走」(63)の
脚本の他、「暗黒街の顔役」(31)の原案、「拳銃貸します」(42)の脚本なども手がけており、フィルム・ノワール史、ハードボイルド
映画史を語る上で、欠かす事の出来ない最重要ライターといってもいい存在である事が判る。
小鷹はいま、バーネットとダシール・ハメットとの相間関係、ベン・ヘクト、ジョン・ヒューストンをまじえた当時の文壇、映画界の
相関図に大いに心惹かれているとの事だが、その研究成果の発表を、僕は心待ちしておこう。小鷹信光は翻訳者である以上に、すぐれて
評論家であると思うから。
本書はいずれ≪ポケミス名画座≫の1冊として「犯罪王リコ」の書名で他の訳者で出版されるであろうが、そちらも読むべきであるのは
いうまでもあるまい。野崎孝・訳「ライ麦畑でつかまえて」を読み、村上春樹・訳「キャッチャー・イン・ザ・ライ」を読むように。