「映画監督 深作欣二」

 発行・ワイズ出版
著者・深作欣二+山根貞男
定価・4200円+税
 
丸山哲也


 
 
 
 

 今年の初めに世を去った映画監督、深作欣二の対談本である。彼が「仁義なき戦い」シリーズ等でタッグを組んだ脚本家・
笠原和夫の「昭和の劇」も大著であったが、こちらのボリュームも相当なものである。何しろ、デビュー作から数えて61本
にも及ぶ作品を、監督本人が微に入り細にわたって語るのだから、構えが大きくなるのも無理はない。かなり昔にキネマ旬報社
から出た「世界の映画作家22 深作欣二・熊井啓」にも、「監督 自作を語る」というコーナーがあったが、これは字数が
限られていた。だから「作品を語り尽くす」というところまでいっていなかった。
 その点、こちらは索引まで含めて526ページ。「あの作品について、こういうことが知りたかった!」という向きは必ず
満足することだろう。深作作品としてはあまり語られることのない「ガンマ第3号 宇宙大作戦」の製作のいきさつなど、
私は本書で初めて知った(先日「ガンマ第3号」をビデオで観る機会を得た。「アルマゲドン」と「エイリアン」をくっつけた
ような物語に驚いた。しかも、こちらの方が何年も先にやっているのである)。
 また、デビューしたての頃、あの岡本喜八の作風に影響されていたという話があって、これまた意外であった。そう言えば、
岡本はいつの頃からか手持ちカメラ方式を多様するようになっていたが、手持ちと言えば深作の独壇場。作る作品のムードの
まるで違う二人が手持ちカメラを好むようになったというのは、何となく面白い。

 ・・・ただ、読み物としての面白さから言うと、本著は「昭和の劇」に比べると、やや劣る。これはまあ、仕方のないこと
だろう。映画監督は「映像で語る」のが商売だから、喋りもやや感覚的になる。実際に耳で聞けば面白いであろう話も、活字に
してしまうと、ちょっと苦しい。笠原和夫は「活字の人」で、しかも綿密な取材をすることで知られた人だから、喋りは簡潔
だし、実証的かつ具体的。こういう人の話の方が、本にした時に有利なのは当然だろう。

 とは言うものの、深作が本書で吐露している「今の日本の観客にはアクションを面白がる感覚が摩滅しているのではないか?」
という不安には、大いに共感する。映画も観ず本も読まず、ケータイにばかりカネを費やすガキどもや、構えばかり立派で中身は
スッカラカンの警察映画に「話題になっているから」というだけで群がる観客を見ると、深作の危惧はより現実的なものとして
迫ってくる。
 こういうエネルギッシュなフィルムメーカーに、世の中の方がついていけなくなっているのだとしたら、その世の中は非常に
不幸な状態にあるように思う。


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