「人形〔パペット〕アニメーションの魅力★ただひとつの運命★」

 発行・河出書房新社
著者・おかだえみこ
定価・2000円+税
 
松村清志


 
 
 
 

 今夏はトルンカ、ゼマン、ティールロヴァーというチェコ・アニメの3巨匠の作品集が続々とスクリーンに登場し、かつては“非商業
アニメ”と呼ばれていたものがすっかり定着した。本書はそんな“非商業アニメ”を40年以上も追い続けてきた“非商業アニメ”研究の
第1人者、おかだえみこが様々な種類のあるアニメの中でも特に魅かれるという人形〔パペット〕アニメーションの魅力について教えて
くれる本である。
 まず、オープニングから人形アニメを定義し、その手法を的確に分類してくれているのがいい。ロシアのパイオニアからチェコの
黄金時代、支流、傍流のアメリカ、イギリス、そして日本と、ディズニーのカトゥーンを中心としたアニメ史とは異なる、人形アニメ史
が判りやすく語られている。
 それでいて、薄っぺらな情報本ではなく、例えばいささか“難解”とも思えるトルンカをきっちり論じるあたりなど深い。トルンカ、
ボヤル、ゼマン等、親交もあった作家達の描写には“評伝”的な面白さもある。特に僕は持永只仁、岡本忠成、川本喜八郎という日本の
作家の人間的魅力を語った章に感銘を受けた。
 ここ数年“非商業アニメ”のガイド・ブックが立て続けに出版されたが、本書は真打ち登場ともいうべき1冊となっている。≪アート
アニメーション≫という呼び方を好まず“非商業アニメ”といっているあたりは、正式に劇場上映もされずほとんど資料もない時代から
見続けてきた者の矜持でもあろう。
 おかだえみこは人形アニメを愛し続ける事が、ただひとつの運命と思い定めているのかも知れない。さながら川本喜八郎作品の
ヒロインのように、といえばうがちすぎだろうか。


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