「武がたけしを殺す理由−全映画インタビュー集」
発行・ロッキング・オン
著者・北野武、渋谷陽一
定価・1600円+税
松村清志
音楽評論家の渋谷陽一が北野武に行なった8回のインタビューをまとめたものである。91年から2003年まで基本的に、新作完成時に
その作品について聞いたもので、3作目の「あの夏、いちばん静かな海。」から「座頭市」まで、「みんな〜やってるか!」を除く、
すべての作品に関するインタビューが収められている。
北野武という天才的アーティストについての、作家と作品をリンクさせた貴重な同時代的ドキュメントとして読み応えがある。
これほどの実りのあるインタビューを成し遂げたのが、映画業界人ではなく畑違いの音楽評論家であるのは、いささか無念だとも思える。
映画人には猛省をうながしたい所だ。
それと同じように、音楽評論家であるのなら何故、音楽監督・久石譲について聞いてくれなかったのか、讃・否のある久石の音楽を
渋谷陽一はどのように捉えているのか、語ってくれなかったのかというあたりは猛省をうながしたい。
僕の個人的な見解を述べておけば、久石の仕事はどれも評価したいし、「座頭市」でバトン・タッチされた鈴木慶一はそれまでの
久石の仕事ぶりを踏まえつつ、優れた“劇伴”を付けていたと思う。
そして、やはり“全映画インタビュー”と副題に付けるからには、1、2作目と、番外篇的な「みんな〜やってるか!」に関しても
改めてインタビューを取って収めてほしかったと思う。
それでも本書は映画作家、北野武を読み解く為の手がかりとして凡百の評論などよりはるかに価値のある資料であり、熟読・吟味
すべき深みがある。ファン必携の1冊だといえる。