「映画のことば 映画の音楽」

 発行・いなほ書房
 著者・松下正巳
  定価・2000円+税
 
松村清志


  
  

 
 書名通りに映画における「音声」をめぐって考察した本である。著者の松下正巳(まつしたまさき)は、82年に現在は休刊中の「月刊
イメージ・フォーラム」誌で「第3回ダゲレオ出版評論賞」を受賞している。今も活躍する優れた評論家を何名か輩出した「ダゲレオ
出版評論賞」受賞者の中では知名度は低いが、地道に執筆活動は続けていたわけだ。継続は力なり、である。
 売れっ子ライターとしてレギュラーを持たなくとも、新作を片っ端から消費せずとも、自分が関心のあるテーマについて地道に書き
続けていく姿勢は立派だと思う。実は著者の文章を僕は初めて読んだわけだが、映画に音がついているのは当り前のように考えられて
いる時代にあって、あえて音楽だけではなく台詞や効果音なども包含した、映画の音というものに、ここまでこだわってみせる人も
珍しいのではないか。
 著者は様々な資料をよくあたって映画における音の発達を無声時代から現代まで的確に要約してくれているので、本書は“映画音声史”
のガイド・ブック的に活用する事も出来る。
 多くの映画理論は「映像」の意味を論じてきたが、映画の「音声」について考察した映画理論は極端に少ない。そうした点で貴重な
試みである。本書に接するとスクリーンを見ながら映画を聴く事により意識的にならざるを得ない。

 


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