「戦後史のなかの映画 武井昭夫映画論集」

 発行・スペース伽耶
 著者・武井昭夫
  定価・3200円+税
 
松村清志

 
  
 
 
 武井 昭夫(たけい てるお)、1927年生まれの批評家、その名前は図書館で目にした「戦後映画批評体系」といった本で見かけた
事があり、主に50〜60年代ぐらいに「キネマ旬報」「映画批評」といった映画専門誌などに執筆していた人、といった程度の知識しか
なく不勉強かつ失礼ながらすでに他界された方だとばかり思っていたのだが、まだまだ元気で活躍されていたわけだ。
 そんなわけで本書は遺稿集ではない。もっとも著者自身語っているように70年代からあまり映画を見なくなったとの事なので、80年代
以降の作品は主にビデオでのフォローとなってしまっている。しかし、そうして見た日本映画を語ったロング・インタビューによる“W
 現代日本映画を語る”はきわめてアクチュアルで面白く鑑?力は衰えていない。武井昭夫という名前になじみのなかった若い読者に
こそ、ぜひ読んで欲しい。
 著者の視点は書名にもあるように第2次大戦を経ての“戦後”の歴史を、映画をとおして捉え返してみる、あるいは背後の歴史を
考えることによって、それぞれの映画のなかの映像の意味を捉え直そうというものである。
 「映画人の戦争責任」というテーマで行なわれた小川町シネクラブでの黒澤明「一番美しく」「わが青春に悔なし」の上映とその後の
ディスカッションをまとめた“T”、50年代後半から60年代後半期の日本映画のいくつかについて同時代に書かれた“U”、同じく外国
映画について書かれた“V”と、映画を政治的に捉える硬派の論客の姿勢は一貫している。特に僕としてはドキュメンタリー映画に
ついて学ぶ所が多かった。


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