「映画俳優」

 発行・平凡社
 著者・佐藤忠男
  定価・3000円+税
 
松村清志

  
 
 
 
 初心忘るべからず、佐藤忠男がスター、名優、脇役などひっくるめ映画俳優の魅力について論じて、映画を見るプリミティブな喜びを
思い出させてくれる好著である。
 無声時代から現代まで、追悼文や書評も含む、様々な形式で俳優の魅力で見る映画の楽しさを語っている。巻頭に「はじめに──
スターと年輪」と題してスターと名優を判りやすく定義付け、俳優が年齢を重ねていく事の難しさと素晴らしさを語った文章がある。
まずそこを読んで後は興味をひく所から拾い読みしていけばいい。
 僕が特に刺激を受けたのは「原節子不美人説について」他の、原節子をめぐる3つの論考である。実は僕も原節子を日本を代表する美人
とは思えず、むしろ外国人受けのする「バタくさい」容貌で小津の映画が海外で認知された事には彼女の存在も大きかったのではと
思っていたのだが、海外では小津作品では彼女のみ不評であったそうなのだ。この辺の記述は何ともポレミックで必読ものの面白さで
あった。
 全体を通じて日本の時代劇スターに関連した論考が多いのは巻頭文に則しているが、主に70年代までのスターの本といった印象が強く、
今日の新世代スターや、近年佐藤忠男が研究を続けているアジア映画のスターについても論じて欲しかった。それは今後に期待して
おこう。
 ともあれ、気軽に楽しく読めるスター論、俳優論として、どなたにも安心してオススメしたい。


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