「刑事マディガン」
発行・早川書房
著者・リチャード・ドハティー
訳者・真崎義博
定価・1500円+税
松村清志
≪ポケミス名画座≫第6弾、ドン・シーゲル監督、リチャード・ウィドマーク、ヘンリー・フォンダ主演、68年度アメリカ映画の原作。
≪ポケミス名画座≫ではこれまでで最長の長篇である。日本語版で約400ページ、この長さを費やして描かれるのは、ある夏の日の週末
の3日間の出来事である。うかつにもチンピラに拳銃を奪われてしまった腕利きの刑事が犯人を捕え拳銃を取り戻す為に苦闘する姿と、
市警本部長が友人でもあった主任警視の不正の証拠を前に対決を余儀なくされ苦悩する姿とが交互に描かれている。
読み応えがある。人物の内面や人間像がリアリティを持って書かれており人間が生きている小説だと思える。それだけではなく、巨大
組織となった警察の内側がまるでルポルタージュのように詳細に記述されており、当時(原作の発表は62年)の警察機構をリアルに
捉えていると感じさせる。警察小説の名作といっていいであろう。
映画の方(10年ほど前にビデオで見たきりだが)もほぼ原作に忠実に映像化されているといっていいが、小説の原題は
The Commissionerで映画でヘンリー・フォンダが演じた市警本部長の方に、やや比重がかかっている。60年代以降のヘンリー・フォンダ
の役柄の選択に関しては意見が分れるであろうが、僕は「ウエスタン」(68)「大脱獄」(72)で悪役を演じたフォンダを先に見て
しまった世代に属するので、悪役のフォンダもかなり好きである。ともあれ、ここでのフォンダはかつての誠実なアメリカの良心で
あったヘンリー・フォンダのイメージを裏切らない、いい役であったと思う。
リチャード・ウィドマークは、もちろんいい。原作のマディガンはハンサムな男だそうだが読んでいる間中ウィドマークの顔が
オーバー・ラップしてしまったほど強く印象付けられている。マディガンはウィドマークの当り役となり72年にはTVシリーズ化も
された。(日本では79年に放映)
最後にリクエストをひとつ。60年代末から70年代末にかけて放映されたTVシリーズ「鬼警部アイアンサイド」を67年にジム・
トンプソンが小説化したものを≪ポケミス名画座≫番外篇として訳出してくれないだろうか。今や日本でも人気が定着しほぼ全作が
訳出されているトンプソンだから、かなり話題になると思うのだが。