「世界のすべての女を愛している ジョルジュ・シムノンと青春のパリ」
発行・白亜書房
著者・長島良三
定価・1800円+税
松村清志
ジャン・ギャバン主演の<メグレ警視>シリーズやパトリス・ルコント監督「仕立て屋の恋」(88)など、その小説が数多く映画化
されている、大作家ジョルジュ・シムノン、生誕100年にあたる2003年末に発行された本書は、日本でいちばんシムノンの著作を翻訳
している長島良三による、1920年代から第2次大戦が終結した45年までに焦点をしぼって書かれた、シムノンの前半生の評伝とでも
いうべき本である。
20年代のモンマルトルを舞台に描かれる多くの芸術家と様々な女性との交流は興味津々たるものがあるし、自作を親しい友人で
あったジャン・ルノワールが監督した「深夜の十字路」(33)の脚本を執筆した際のエピソードでは、あの映画が何故不可解であった
のかという理由を教えてくれたりもする。シムノンが30年代以降、映画に関心を失ってしまったというのは何とも残念だが、しかし、
シムノンの映画化作品は本書で書かれていない45年以降に本格化しているのだ。シムノンは60年のカンヌ映画祭で審査委員長を務めて
もいるのである。
となると当然のようにすぐさま後半生の評伝を続けて読みたくなろうというものだ。早めの続刊を期待したい。その際には
“シムノン映画化作品全リスト”をそえてくれればありがたい。