「興業師たちの映画史」
発行・青土社
著者・柳下毅一郎
定価・2400円+税
松村清志
送っていただいた本はすでに第2刷であった。売れているようである。副題は“エクスプロティーション・フイルム全史”、芸術
でも産業でもない見世物としての映画史、かなりの映画ファンでも知らないであろう映画ばかりをズラリと並べた、もうひとつの
映画史というべき異色の面白本である。
最近はまっているミステリのマエストロ、ジョン・ディクスン・カーの著作でも言及されている20世紀最大の魔術師ハリー・
フーディーニが映画を撮っていたことを僕は本書で初めて知ったし、「魔人ドラキュラ」(31)「フリークス」(32)の栄光と悲惨
のみであまりに有名になってしまったトッド・ブラウニングの全作品や、オスカー・ミショーやエドガー・G・ウルマーの人種向け
映画など、ほとんど見る機会のなさそうな作品を、どうやら著者はきちんと見て書いているようなあたり、本書は大変な労作だと
いえる。
もっとも、セックス映画といえば必ず名前の出て来る「ディープ・スロート」(72)や、今や“おしゃれエッチ”映画として認知
されたラス・メイヤーなどを定番的に取り上げながら、ジョン・ウォーターズにほとんど触れていないのは物足りないし、新東宝を
取り上げるなら石井輝男の最近作2作にまで話を進めて欲しかった。続刊を期待したい。