現代・アメリカ・映画」
 

発行・河出書房新社
 著者・田中英司
 定価・1500円+税
 
松村清志




 最近売り出し中の新進批評家、田中英司が99年を境にアメリカ映画は変ったのではないかという仮説を元に論じた、評論集である。
先に出版された「現代・日本・映画」(河出書房新社)は、僕が彼の文体や形容詞になじんでいなかった為か、あいまいで何を
いいたいのかよく判らん記述が多かったように思ったが、本書はとても判りやすく色々と考えさせられる論考に満ちた興味深い1冊で
ある。
 例えば、ロバート・ゼメキスを論じた項の「人間の素晴らしさを描きながら、人間を軽視しているゼメキスの矛盾」という指摘など
鋭い。いつも面白く水準以上の作品となっているのに見終ってすぐさま忘れてしまえるゼメキス映画の本質を簡潔にいい当てているし、
この指摘がそのまま現代のアメリカ映画がおち入りやすい罠である事はいうまでもないだろう。
 そうした観点からのスピルバーク、ルーカスというテクノロジーの2大巨頭への批判も的を射ているように思えるし、デビット・
フィンチャーを「監獄と管理」、スティーブン・ソダーバーグを「圧縮映画」とひと言で要約してみせるあたりの批評力にも
感心した。
 そんなわけで本書は、新世紀を迎えてアメリカ映画がどのように変化していくのかを考える為のガイド・ブックとして、再読・三読
に値する魅力的な評論集となっているといえる。


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