「セメントの女」
 

発行・早川書房
 著者・マーヴィン・アルバート
 訳者・横山啓明
 定価・1000円+税
 
松村清志




 
 
 ≪ポケミス名画座≫の9冊め。これまで発行されたものはどれも映画ファンなら知っているであろう有名な名作・傑作の原作で
あったが、本書はかなりの映画マニアでも知らない人が多いのではあるまいか。
 フランク・シナトラがヨット暮らしのマイアミの私立探偵、トニー・ロームを演じたものは「トニー・ローム/殺しの追跡」(67)
「セメントの女」(68)と2本作られているが本書はその後者の原作である。
 映画は2本とも子供の頃にTV放映で見ているがほとんど記憶に残っていない。すまん。ただ、ナンシー・シナトラによる明るい
主題歌は耳に残っていて、公開当時の<ハーフボイルド>という評言などから、おふざけの要素の多い軽ハードボイルド小説を予想
していたのだが、意外とマトモな小説であった。
 作者のマーヴィン・H・アルバートはジョン・スタージェス監督の“決闘三部作”の中で最も通好みの「ゴースト・タウンの決斗」
(58)の原作、ラルフ・ネルソン監督「砦の29人」(66)、リチャード・フライシー監督「ザ・ファミリー」(73)の原作・脚本
などを書いた人で、60年代半ばにはシナリオ・ライターとして20世紀FOXで史上最高の報酬を得ていたそうだ。
 フランク・シナトラ主演の60年代エンターテインメント映画は近年「オーシャンと十一人の仲間」(60)がリメイク公開され、
「影なき狙撃者」(62)のリメイクも本年公開の予定である事からも判るように、粒揃いであったといっていいのではないか。
本書はそんなシナトラ主演作のうち“軟”を代表する映画の原作として、1読に値する。

 


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