「映画プロデューサーが語る ヒットの哲学」
発行・日経BP社
著者・原正人
構成・本間寛子
定価・1400円+税
松村清志
「小さな恋のメロディ」「エマニエル夫人」「地獄の黙示録」「ニュー・シネマ・パラダイス」「戦場のメリークリスマス」「乱」
「失楽園」「不夜城」「リング」……これらのヒット作、大作、映画ファンなら誰もが知っている作品の宣伝、プロデュースを
手がけてきたのが本書の語り手である原正人である。
映画会社としては新興のバッタもん会社であった日本ヘラルド映画を独自の宣伝戦略で発展させ、81年からは映画製作に乗り出し
ミニシアター・ブームの基礎を作り、前述の作品以外にも「瀬戸内少年野球団」「雨あがる」「突入せよ!「あさま山荘」事件」
などをプロデュースしている原正人は、1931年生まれ、映画人口がピークに達した58年にヘラルド入社、以降、映画人口が減少の
一途をたどっていた映画不況の時代から世の中全体がバブルで浮かれていた時代をへて、バブルがはじけてしまった現在まで、常に
宣伝・プロデュースの第1線で活躍している。本物の映画人だといっていい。
そんな原の語り下ろしによる本書は、監督中心主義、作品中心主義では見えてこないもうひとつの現代映画史として出色の面白さ
である。
特に僕は、“エマニエル伝説”再びと取り組んだものの明暗を分けてしまった「赤い帽子の女」と「失楽園」のくだりや、「乱」
での失敗を踏まえての、監督とプロデューサーは親子のようであってはならないという自論や、製作作品に込めるある種の
センチメントと、人間に対する信頼や共感というプロデューサーとしてのスタンスなどを、とても興味深く読んだ。
ただ、デジカム映画の先駆的傑作といっていい『(FOCUS)』について言及されていない事と、「不夜城」でのアジアの才能を
取り込んでいくという方法が、その後さしたる発展を示していないようなのはいささか残念だと思わされた。
ともあれ、宣伝・プロデューサーを志す若者はもちろん、硬派の映画論客に取っても、「プロデューサーによる映画論」として、
1読の価値のある書物である。