「オーケンの、私は変な映画を観た!!」
発行・キネマ旬報社
著者・大槻ケンヂ
イラスト・三留まゆみ
定価・1400円+税
松村清志
「キネマ旬報」で2001年から3年間達成された人気コラムを1冊にまとめた本書はミュージシャン、エッセイスト、コラムニスト、
小説家と多方面に渡って活躍している、ロックバンド特撮のヴォーカリスト、大槻ケンヂ(おおつきけんじ)が、名画座に通う映画
少年だった中学・高校時代から現在までに出会った、170本のヘンムービーを紹介しつつ、高級芸術映画と低級クズ映画、メジャー
なビック・パジェット映画からマイナーなアンダーグランド映画までを、゛へん゛というキーワードでもってボーダーレスに楽しんで
しまうという、新しい映画の観方を伝授してくれる面白本である。
90年代ぐらいから、それまでは駄作、愚作、失敗作と片付けられてきたようなタイプの映画を、バカ映画と呼んで笑って楽しんで
しまおうという風潮が映画フアンの間に浸透してきたようだが、映画フアンのキャパシティを拡げる事には貢献したであろうこの風潮
は、反面、「バカ映画」という呼称そのままに、どこか映画を見下しバカにしたようなごうまんさをぬぐいきれていなかった、という
気もする。
さりとて、「エル・トポ」(68)あたりから使われだしたらしいカルト映画という呼称は、新興宗教による事件があったりして
「カルト」という言葉のイメージがいささか悪くなってしまったし、宗教を例にあげるまでもなく、この言葉にはやや排他的で
フアナティックな部分があって、大衆娯楽としてスタートしたはずの映画の、観客の裾野を拡げる事には、実の所余り貢献してこな
かったのではないか、とも思えるのだ。
そこでヘンムービーである。このカテゴリーにはバカ映画には入りそうもないヴイクトル・エリセヤケネス・アンガーの監督作品も
入ればカルト映画映画には入りそうもない「ノストラダムス大予言」や「エアポート80」も入ってくるのである。そして、゛変゛と
いう字は゛恋゛という字に似ている。インテリ向けの偏差値の高い映画も大味なエンターテインメントの偏差値の低い映画も共々、
その゛変゛さに注目すれば同じように゛恋゛することが出来るのではないか。゛ヘンさ値゛の高い映画、それがヘンムービーだと
いえばいいか。
あるいは、「バカ映画」と「カルト映画」を止揚する言葉として「ヘンムービー」を捉えてもいいかも知れない。
ともかく、゛ヘン゛をキー・ワードにすれば映画の観方が変わる、どんな映画でも観るのが楽しくなる、とさえ思わせてくれる、
何とも魅力ある゛ヘン゛な本なのだ。