「映画覚書 VOL.1」

発行・文藝春秋
著者・阿部和重
定価・2381円+税

松村清志



小説家、阿部和重が99〜04年にかけて「文学界」を中心に発表してきた文書と二つの対談(×中原昌也、×蓮實重彦)をまとめた1冊
である。
阿部の映画に関する文章はかって青山真治「冷たい血」のパンフに載った文章を読んだのみだったが、その時は身内ボメの紋切り型の
文章といった程度の印象しか受けなかったが、本書は中々に魅力的な文脈と人脈に支えられて、刺激的な本となっている。
阿部のデビュー作が「アメリカの夜」という題名だったので、ヨーロッパ映画志向の人だと思われてしまったらしいなどというのは、
映画マニアの閉じたサークルの中だけの話で、むしろパンピーには当然のようにアメリカ映画好きというのは伝わっているのでは
ないか。アメリカの夜=トリュフォーとはパンピーは連想しないのである。むしろ、アメリカの夜=ヨーロッパ映画と多くの映画
ファンが連想するようになってしまった点にこそ、現在のアメリカ映画の悲劇が存在しているといえるではあるまいか。
そんなわけで、本書は対談相手の中原、蓮實らと共に阿部が現在のアメリカ映画を擁護するというのが、ほとんどメイン・テーマ
なっているといっていいような本た゛。
あべの文もアメリカ映画について書かれたものが最も面白く、特に僕はスピルバークについて書かれたものに共感したし、
「マトリックス リローデッド」他いくつかの大作に関する文章には現在アメリカ映画の問題点が要約されているように思えた。
「アメリカの夜」を始めとする阿部の小説もアメリカ映画のように読まれねばなるまい。


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