「山田和夫 世界映画の発見」
発行・新日本出版社
著者・山田和夫
定価・1700円+税
桑島まさき
優秀な映画評論家が書いた著書の数々は、なるほどこういう読み解きができるのか、といつも私を感心させてきた。つまり著書に
よって私はいつも映画の「発見」を繰り返してきた。著名な映画評論家の一人である著者は本書を「世界映画の発見」と名づけた。
その理由はあとがきでもあるが、序章で「自ら足を運び、さまざまな国の映画と映画人に出会い、あるいは多様な民族の作品を通じ、
可能な限りの文献を渉猟して私は世界映画を『発見』する旅を続けてきたし、いまも続けている。それは同時に映画を通じての歴史
の発見でもある。そのことが日本映画の再生を願う、私の映画運動参加をどれほど勇気づけてくれるか、わからないのである」と
述べている。
私たちに多様な映画の観かたを示してくれる評論家が映画を<発見>するためにいかに心血を注いできたか。まずはそのことに敬意を
表したい。本書は、映画をさほど見ていないのに観たようなフリをして映画関連の原稿を書いている私にとってはまさに参考書で
ある。
<映画オタク>にとっては第U章の「世界映画の作家と作品」がより深く味わえるだろう。<オタクではないが映画好き>には第V章の
「時代を撃った世界の映像」が興味深く読めるだろう。なかでも「韓国映画ブームに読み取るもの」では、大ヒットした映画
「シルミド」とTV「冬のソナタ」をとりあげ、かけはなれたような距離を感じる両作品に共通する<民族的記憶がきたえ育てた、
韓国の伝統的な「感情」表現のしたたかな根っこがある>という説は面白い。韓国人の喜怒哀楽のすさまじさをただごとではないと
思っていた私は深く納得した。感情に訴え、観る者の心情に忠実に訴えようとする訴求力は確かにパワフルだ。ウルウル泣かせて
ばかりいないで、やはり「善は報われる」ことを期待するのが心情というものだ。
ハリウッド映画は依然優勢であるが、先住民マイノリティ−を含む、すべての諸民族の映画的アイデンティティ−を目ざす前進を
とどめることはできない、という著者の見解は、グロ−バリズムに危機を感じている私にとっては安心材料であり嬉しい限りだ。