「68年の女を探して 私説・日本映画の60年代」
発行・論創社
著者・阿部嘉昭
定価・2500円+税
松村清志
1958年生まれの批評家で立教大学非常勤講師である阿部嘉昭(あべ・かんしょう)が、61年から74年までに制作された11本
の日本映画をテクストとして、03年度に大学で行った映画講義を再現した本である。
とりあえず本書も先に「中条省平は二度死ぬ!」(刊・清流出版)の書評で述べたような、1950年代生まれの世代が、自己形成期
を回顧的かつ批評的に再検討した書物の列に加えていいだろう。
「もうひとつの映画史」としては、やや難解と感じられもするが、本書で取り上げられている映画はすべてビデオやDVDで入手
出来るものばかりなので、それらを見て感じた上でじっくりと熟読して欲しい論考である。
僕なりに本書の論考を特長付けるものを上げてみると、まず若尾文子の先駆的な映画女優としてのスゴサの再確認、ついで今だ正当
な評価が成されていない大和屋竺というシネアストの復権の試み、黒木和雄に代表される岩波映画出身者によるヌーベル・ウァーグへ
の注目、公開当時は評価の低かった大島渚監督「東京戦争戦後秘話」(70)の読み直しという事になろうか。少なくとも僕はそれらの
論考を特に興味深く読んだ。
大島渚監督「白昼の通り魔」(66)や吉田喜重監督「エロス十虐殺」(69)に関する論考も、先頃出版された「大島渚1968」(刊・
青土社)、「吉田喜重の全体像」(刊・作品社)と併読すればよりスリリングな、説得力のある論考となっている。
本書の゛核゛ともいうべき゛女性像イメージ゛゛については僕は率直に言ってあまりよく判らない部分もあったが、田中登監督
「秘・色情めす市場」(74)が、荒戸源次郎―リトハルモア系列の作品に影響を行使しているという指摘はうなずけるものがあった。
それやこれやで繰り返し読まれるべき深い書物である。