「私の戦争」

発行・岩波ジュニア新書
著者・黒木和雄
定価・740円+税

桑島まさき


「戦争」を描きつづける映画監督・黒木和雄の著書。岩波ジュニア新書から出版されているだけあり戦争を知らない世代の子どもたち
に、人類が犯した最大の罪である戦争の悲惨さを平易な文章でわかりやすく書いている。タイトル「私の戦争」とあるように、黒木は
戦争体験者であり、戦争によって愛する人々を数多く失い、自分だけが生き残ったことに対する贖罪の念がずっと彼を苦しめる。後に
「戦争レクイエム三部作」とよばれる「TOMORROW/明日」「美しい夏キリシマ」「父と暮せば」を完成させた。「戦争」を
描いた日本映画はあまたあるが、黒木の戦争映画は戦闘シーンはほとんどなく、戦時下に生きる人々の日常を描き、戦争の残酷さを
語る。珍しい手法だが、金をかけ壮絶な戦闘シーンを描いた大作と呼ばれる作品では描ききれない、戦争が人々に及ぼす悲劇を
じわじわと炙り出すことに成功している。

ところで、本原稿を書いている10月31日、イラクで武装グループに拘束された後無惨にも殺害された日本人旅行者、香田証生さんの
ニュースが飛び込んできた。危険勧告が出されているにもかかわらずイラク入りしたことは無防備としかいいようがないが、何の罪も
ない香田さんが殺される理由など何もない。しかし、それは日本人である私たちが考えることであり、常に戦争が続いているイラクの
ような政情不安定な国には通じない。他国から派遣されてくる「軍隊」や「自衛隊」はたとえ人道支援が目的であっても、彼らには
「占領軍」と映っても仕方がないのではないか。勿論、一般市民の中にはそう思っていない人もいるだろうが。
自分の国にやってきた軍服をきたこわそーな他国の人々を見るイラクの人々と、アメリカの進駐軍に竹やりをもって突っ込んでいく
康夫(「美しい夏キリシマ」)の姿が重なってみえるのは私だけだろうか?
戦争はいまだに世界各地で起きている。
 
三部作の詳細なデータ、撮影秘話などを交えながら戦争へと突き進む危機感を孕んだ現代に、戦争をしる世代の黒木が提唱する平和へ
の願い。「いつか来た道」を日本が再び辿るのではないかという恐れ。今の時代だからこそ撮らねばならないという使命から映画を
作り、書かねばならないという使命から本書は生まれた。


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