「犬猫 36歳・女性・映画監督が出来るまで」

発行・フリースタイル
著者・井口奈己
定価・1200円+税

桑島まさき


勿論、才能がないと幸運をモノにすることはできないが、女性監督・井口奈己はそう訪れることのないチャンスを逃さずしっかり成功
へ結びつけた強運な人ではないだろうか。日本映画界には、女性監督は確かに存在するが、その数は欧米と比較すると少ない。そんな
中、映画は夏休みに観る程度だった著者が、なんとなく映画学校へ入り、自分でも映画が作れるかなーと思い、初めて書いたシナリオ
を自主製作し、それをPFFアワードに出したところ入選。運良く中野武蔵野ホールでレイトショー公開され、日本映画
プロフェッショナル大賞・新人賞を受賞し好評を得る。
ご存知だろうが、「犬猫」は8ミリ版と35ミリ版がある。35ミリ版のほうは昨年公開され、やはり大きな評価を得て海外の国際映画祭
に正式出品された。8ミリ版で初めて撮った作品が評価され突如有名になった著者が、決して“まぐれ”ではなく実力で獲得したもの
であることを証明する“試験”が、35ミリ版「犬猫」の製作だったのだ。とはいえ、そんな機会を与えてもらえるのは、やはり実力と
強運の持ち主だと思うのだが……。

著者が8ミリ版を撮ったのが97年から01年、その後宣伝活動などが続き、03年に35ミリ版を撮ることになり、公開されたのが04年。
つまり、97年から04年までの7年間を「犬猫」のために費やしているのだ。いきなり劇場公開用映画を撮るように言われた著者が、
四苦八苦しながらプロの映画製作の現場で渦にのみこまれていく様子、製作秘話など様々なエピソードを絡めながら綴った本書は、
一人の女性監督が誕生するまでの冒険の記録であり、素人っぽさが実に好感がもてる。映画「犬猫」にみられる微妙な関係の
女ともだちのさりげない日常が、女性ならではの感性で描かれているように、本書は至極自然体で書かれ、著者の物事に対する真摯な
姿勢が感じられる。
高名な映画評論家・山田宏一氏とのエピソードも興味深く、巻末に対談もついている。これからが著者にとって正念場だろう。
次回作に期待したい!


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