「実録マフィア映画の世界」

発行・洋泉社
著者・山田吐論
定価・1600円+税


松村清志


 マフィア映画をより深く理解し味わうために1誌をオススメしたい本である。著者は山田吐論
(やまだ・とろん)、聞いたことのない名前であり本書の元となる文章が発表されたのは知る人ゾ知る反権力雑誌「実話時代 BULL」
(メディアボーイ)だが、断じてキワモノではない。みっちりと資料をあたりしっかりと書かれた、読み応えのある、それでいて
読みやすい本である。
「ゴッドファーザー」(72)「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」(84)「グッドフェローズ」(90)、これらのうちどれか
1本でも好きなら、あるいはフランシス・フォード・コッポラ、マーティン・スコセッシ、セルジオ・レオーネ、彼らのうち誰か1人
でも好きな監督であれば、本書を読んで損はしない事は保証する。
同時代的には評価の低かった「スカーフェイス」(83)「バグシー」(91)を別の側面から評価し直している記述に溜飲を下げる人も多い
であろうし、僕など3度目に見てやっと良さの分かつたフランチェスコ・ロージ監督「コーザ・ノストラ」(73)を映画史に残る傑作と
断言しているあたり、かなりの゙通゛だと思わせる。
「ギャング・オブ・ニューヨーク」(01)の失敗の要因やスコセッシとコッポラの資質の違いへの言及など、凡百の映画評論家より
はるかに的確であるとさえいえる。名作・有名作ばかりでなくTVシリーズやビデオ・DVDでしか見られない凡作の類も丁寧に拾って
見ているようだし、「ゴッドファーザー」以前の古典的作品もきっちりとフォローしており、ひとくくりにされがちな゛マフィア゛
の発展史や人種・出身地による分布も判りやすく解説してくれている。ドン、マーロン・ブランドへのリスペクトもうれしい。
著者は広義のマフィア映画評論の第1人者と認知されてもいいのではないか。今後マフィア映画の新作が製作されれば「キネマ旬報」
のような映画専門誌はこの人に原稿依頼するべきであろう。


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