「E/MブックスFクリント・イーストウッド≪増補改訂版≫」
発行・エスクアイア マガジン ジャパン
編集・遠山純生
定価・2,000円+税
松村清志
クリント・イーストウッドについて読んでみよう、というわけで本書をオススメしたい。
99年に発行された初版に99年以降の作品解説などを加えた≪増補改訂版≫である。
ともかく資料として、これ以上ないぐらいに充実している。エスクアイア マガジン ジャパン社の映画本は海外インタビューから
の翻訳が大きな魅力のひとつだが、なかでも僕は「Directed by…」と題された、イーストウッドが若き頃に観た映画やキャプラ、
ヒッチコック、ウィリアム・ウェルマンといったアメリカ映画全盛期の巨匠たちとの交流を語った部分を興味深く読んだ。
(78ページ〜)
「タイトローブ」(84)をめぐるインタビュー(88ページ〜)では殺人犯を演じた俳優の声をイーストウッドが吹き替えたと語っており、
監督デビュー作「恐怖のメロディ」(71)の主人公がDJという声の職業であったあたりからイーストウッドの音声へのこだわりは一貫
しているのだと確信させられたし、フィルモグラフィーでゴースト・コメディ「キャスパー」(95)にカメオ出演していたことを
知ると、やはりイーストウッドは自身の亡霊∞守護天使≠フようなセルフ・イメージをわきまえているのだと感嘆してしまう
のだ。
ウィリアム・ウェルマン監督「オックス・ボウ事件」(43/日本未公開)をイーストウッドがフェヴァリット作品に挙げていることは
本書で何度かふれており、それが彼のアメリカ復帰作「奴らを高く吊るせ!」(68)や「ミスティック・リバー」(03)にまで影響を
及ぼしていることは知ってはいたが、「荒野のストレンジャー」(02)が「真昼の決闘」(52)の保安官がもし殺されていたら?という
所から発想したというのは本書の作品解説で初めて知ることができたわけで、そうした観点から正統アメリカ映画の亡霊≠ナ
あるかのイーストウッド映画を論じてみたいという意欲をかき立てられた。
亡霊%I存在としてのイーストウッドはかつての不気味さを感じさせるゴーストから「ミリオンダラー・ベイビー」(04)に到って
守護天使≠ヨと昇降していったともいえようし、「ミリオン〜」を観れば誰もイーストウッドを神との関連で論じても奇異に感じ
ないのではないかとも思うのだ。次作「Flags of our Fathers」は、おそらくイーストウッド版「シン・レッド・ライン」となるの
ではないかという気がするのである。
本書はイーストウッド映画をより深く味わい理解する為の座右の書となる1冊であり、多くの人に手にして欲しいと願う。