「ハリウツド映画の巨人 クリント・イーストウッド」

発行・近代映画社
編集 発行人・小松修造
定価・2000円+税

松村清志


 「ミリオンダラー・ベイビー」で初めてクリント・イーストウッドの映画を観たという若き映画フアンもかなりの数いるのでは
ないかと思うが、そうしたイースト・ウッド初心者に強くオススメしたいのが本書である。
むろん、「ローハイド」やマカロニ・ウエスタンや「ダーティー・ハリー」の頃からイーストウッドを同時代的に観続けてきたと
いう年季の入った不安にも自身をもってオススメしたい。
 老舗の映画フアン雑誌「スクリーン」を発行している近代映画社創立60周年記念出版として発行されたグラフ本である。同社からは
他にやはり60周年記念としてチャールズ・チャップリンのグラフ本も発行されており、イーストウッドはいずれ映画史上で
チャップリンと並ぶほどのシネアストとして位置付けられテイクのではないかという僕の見解が裏付けられたようで何ともうれしい。
 本書は、イーストウッドのほぼ全出演作や監督作はもちろん、ハイスクール時代から現在までの、撮影現場でのオフ・ショットや
プライベート・ショットなど貴重な写真をふんだんに掲載してヴィジュアル的にイーストウッドの軌跡をたどりつつ、ミーハー的な
情熱とフアン気質を失わない筋金入りのイーストウッド・フアンである映画評論家・秋元鉄次によるエッセイ「クリント・
イーストウッド75年史」をそえて、読みやすく判りやすくこの巨人の偉業を教えてくれる1冊となっている。
 62年にTV「ローハイド」の人気によって初来日した時の写真など僕はこれまで目にした事がなかったし、やはりYVの「逃亡者」で
大人気を得たデビット・ジヤンセンと無名時代に同じ演劇教室で学んでいた頃の写真なども実に貴重な資料である。50年代末から
60年代にかけてのアメリカTVの黄金時代にイーストウッド以上の人気を集めていたといっても過言ではないデビット・ジャンセンも
「拳銃武宿」のステイーブ・マックィーンもすでに他界し、淀川長治の゛解説゛デビュー作ともなった「ララミー牧場」で、特に日本
では大人気であったというロバート・フラーもどこかへいってしまったというのに。イーストウッドは今だ゛現役゛のままだ。本当に
息の長いスゴイ人だといわざるを得ない。
 TV時代、イタリアでのマカロニ・ウエスタン時代、ハリウッドのマネー・メイキング・スター時代、そして監督業へとウェイトを
移行し始めた時代から現在までと、いくつものピークがあり、それぞれに数えきれないほどの大人脈とエピソードを持っているで
あろう。
いずれ、みっちり調査した本格的な゛評伝が書かれることは間違いないだろうが、その日まで本書はくり返し眺め読んで楽しみたい
本である。時として重くペシミステックといってもいい映画を作るにも関わらず、イーストウッドは生きる勇気を与えてくれる人で
ある。そうして現在のイーストウッドは年を取る事の素晴らしさを教えてくれる。「老年は壮麗に昇る」というウォルト・
ホィットマンの言葉を捧げたい。


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