『最近読んだ本〜「映像の発見」「5枚のカード」「映画1日1本」「ブレード・ランナーの未来世紀」』

 


「映像の発見」──松本俊夫の伝説的名著の40年ぶりの完全復刻である。ドキュメンタリーとアヴァンギャルドの融合というか、
シュール・ドキュメントという芸術課題を論じて大和屋竺や中条省平らにも多大な影響を与えた本だ。巻頭に中条省兵による名解説が
掲載されているので、僕ごときが今さら書評するのはおこがましい。古びることのない真に古典的名著と
呼ぶにふさわしい書物である。特に僕は゛追体験の主体的意味゛と題されたアラン・レネ「二十四時間の情事」を論じた文章
(132ページ〜)が好きだ。

発行・清流出版
著者・松本俊夫
定価・2000円+税


「5枚のカード」──《ポケミス名画座》16曲目。《ポケミス》の半世期に渡る歴史の中で初のウェスタン小説である。西部劇の世界
にミステリ風味を加えた小説だ。映画の方はヘンリー・ハサウェイ監督、ディーン・マーチン、ロバート・ミッチャム共演で68年に
製作、公開されている。ミッチャムが「狩人の夜」を思わせる謎の宣教師役とくれば観たくてたまらなくなる。昨年他界した
トレヴァニアンのどうやら遺作となったらしい「ワイオミングの惨劇」も西部小説だったが、あちらでは確固としたジャンルとして
定着しているらしいウェスタン小説は日本ではほとんど読まれていない現状だが、これを機にもう少し翻訳出版して欲しいものだ。
ダミール・ハメットらのハードボイルド小説ルーツをウェスタンに求める研究があるし、エルモア・レナードがいくつも西部劇の
脚本を書いていたり、ウィリアム・ワイラー監督の名作「大いなる西部」の原作者はハードボイルド・スパイ作家のドナルド・
ハミルトンであったり、ケヴィン・コスナーの「ワイルド・レンジ」にはチャンドラーの影響があったりと,ミステリと西部劇は因縁
浅からぬものがあるのである。
 そこらへんのことを、まとめて語ったミステリイ評論家、松坂健の名解説と共に、一読の価値ある1冊である。

発行・早川書房
著者・霊・ゴールディング
訳者・横山啓明
定価・1000円+税


「映画一日一本」──゛DVDで楽しむ観逃し映画365゛と副題がつけられているが,まだDVD未発売の最新作まで含めてわずかな字数で
きっちりと各作品の観所、作家の特色などを論じて、僕的には短評を書く上での手本としたい優れた1冊である。すでに2度くり返し
読んでしまった。「続・夕日のガンマン」から「ミリオン・ダラー・ベイビー」まで,イーストウッドで始まりイーストウッドで
終わるという構成や、僕がひとりでホメていた感のあった「ターミネーション」をきっちりと取り上げていたり,「チヤーリーと
チョコレート工場」への物言いや、ジャンルを変形させる達人としてのカーティス・ハンソンへの評価など、いろいろと共感出来る
論考がつまっている。文庫本のお手軽価格でもあり、強力プッシュしておきたい。

発行・朝日新聞社
著者・芝山幹朗
定価・780円+税


「ブレードランナーの未来世紀」──パイ投げで勇名をはせた(?)ウエイン町山こと町山智浩による゛<映画の見方>がわかる本゛の
パート2である。今回は80年代アメリカ映画カルト・ムービー篇だが、実にオーソドックスな゛作者の意図を読み取り、作者の意図
していないことまで指摘してやる゛という批評の王道的姿勢に貫かれた本である。おちゃらけたウェイン的文章はあまり好きでは
ないが、こちらの方は大好きだ。じっくりと資料を調べて例証してあるのもいい。中でも僕はボール・バーホーベンの章とデビット・
リンチの章が面白かった。
 特にバーホーベンは「ロボコップ」以降しか知らない人にはぜひ読んで欲しい。僕は何故かバーホーベンは全作観ているが、
オランダ時代の方がはるかにスゴく好きなのである。「危険な愛」は強烈だった!!。バーホーベンを単なるバカ映画の名匠(?)という
認識だけで捉えて欲しくないと思う。
 デビット・リンチの章は、リンチを(アメリカの乱歩)として捉え、乱歩の小説のタイトルを各章のリードとして、町山の名編集者と
しての腕前を示しているといっていい。こうした仕事をもっと続けて欲しいと願う。.


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