「イタリア映画を読む」
柳澤一博著 フィルムアート社刊・2900円(税別)
桑島まさき
今年は「日本におけるイタリア年」。といっても今年も残すところ3ヶ月をきってしまったが。
今春に「イタリア映画祭」の取材をして本シネチリの<記者会見記事>にも書いたことがあるが、とにかくとにかく、日本公開されなかった90年代から00年代の秀逸な作品が実に多い事実がわかり愕然とした。
そして11月13日から来年の2月24日まで、「イタリア映画大回顧」と題した懐かしいイタリア映画が日本公開される。サイレントから80年代までの55本を上映するというから嬉しい限りだ。
さて、本書の紹介。文字とおり書物を<読む>ようにイタリア映画を<読む>ことのできる本である。
40年代から90年代までのイタリア映画史、それぞれの時代の名作をふんだんなカットを使用している贅沢さ。しかも平明な文章で解説してくれている。一部の映画通だけではなくこれからイタリア映画に触れようとする人たちにもわかるようにわかりやすく解説してくれているのだ。
撮影秘話も一杯だ。ヴィスコンティのネオレアリズモの傑作とされる「夏の嵐」。アリダ・ヴァッリが演じた美貌の人妻の狂った恋は何度みても衝撃的だが、当初この役はイングリッド・バーグマンが演じるはずだったとか。お相手はマーロン・ブランド。
この「夏の嵐」は54年度の作品。日本公開されたのは55年。リバイバル上映されたのはつい数年前。今度はいつスクリーンであのパッショネイトなアリダ・ヴァッリに触れることができるのだろうか? …待ち遠しい…。そう思っている人は是非この本を読んでみるといい。
アントニオーニ、ベツトリッチ、フェリーニ等々の名作をビデオで探すのも困難になっている。廃盤になっているのだ。これは嘆かわしい事実だ。そう思わないだろうか、皆さん!
スケールの大きい社会性、モノクロ映像から立ち上がってくるイタリアの匂い。
「ネオ・レアリズモの作家たちは、イタリア人だけが持つ孤独な精神、厳格な現実直視の目、深いヒューマンな思想で、戦中戦後のイタリアの社会と人間とを描き抜いていった」(増村保造…「イタリア映画大回顧」パンフより抜粋)
そういえば増村監督はヴィスコンティに深く傾倒した映像作家だった。イタリア国立映画実験センターに留学して日本で映画を撮った増村が、自身の作品でイタリアで学んだ映画の精神を描こうとしたのは有名だ。それが果たせたかどうかは別として。イタリアは奥が深い国だから…。
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