「最近見た映画 2月24日(火)〜3月1日(月)」
松村清志
相変らずミステリのマエストロ、ジョン・ディクスン・カー(別名・カーター・ディクスン)にはまりっぱなしで、やめられない
とまらないのかっぱえびせん状態だ。すでに27冊読んでしまった。他の事が手につかん。困った。試写はのがすのが多くなるし、
≪ポケミス名画座≫の「白い恐怖」もまだ読んでいない。全著作の2/3(45冊)ぐらい読んだら少し小休止しようとは思うのだが、
ほんとカーは魅力的だ。さすが故・瀬戸川猛資に「世の中にこんな面白いものがあっていいのか」とまでいわしめただけの事はある。
時として、子供っぽいといわれたりもするようだがカーの真価は子供には判らん。
例えば、「曲った蝶番」はキリスト教社会のアイデンティティをゆるがすような恐さを持った小説である。由緒ある資産家の貴族の
当主の元に我こそは本物と名乗る男が表われる。どうやら2人はタイタニック号沈没の際に入れ替ってしまったらしい。清教徒と悪魔
崇拝主義者との対決がメイン・プロットである。カーは≪密室派≫とも呼ばれ数多くのトリックを考案しているが、ここでの書名は
トリックとは関係なく、文字通りの「曲った蝶番」であり、登場人物の夢の中に出てくるのだが、それがそのまま、曲ってしまって
機能しなくなりつつある世界のシンボルであるかのように思われるのである。むろん神学的・哲学的な小説ではなくあくまで
エンターテインメントであり、クライマックスには映画的な場面転換があり、奇抜なトリック、カルト化した某香港映画を先取りした
かのような殺人法を提案していたりして、とても面白い。
そして、カー作品では時として探偵が犯人を逃がしたり、事件を<未解決>で封印したりもするのだが、これはカーが世の中には
善・悪では割りきれない事や、なくてはならぬ嘘や守り通した方がいい秘密がある事をわきまえた、大人の作家である事の証明なの
ではないかと思われるのだ。
さて、最近見た映画です。
2月24日(火)
「ソニー」 ギャガ試写室
ニコラス・ケイジの初監督作品。81年のニューオリンズを舞台とした男娼と娼婦のラブ・ストーリーで、ジョン・カサヴェテスの
影響が感じられる作風である。娼婦役のミーナ・スヴァリが髪を金髪に染めおでこを隠してロリータからファム・ファタールへと
イメチェンを狙った役作りで、これが仲々にいい。主演のジェームス・フランコはTVでジェームス・ディーンを演じて注目された
新人で、イメージとしては50〜60年代の青春スターを連想させる。かってケイジ自身がこの役をやりたがっていたそうだが、女性
相手の男娼というのをケイジがやるといささか濃くなりすぎると思うので、甘いマスクのフランコで正解だったのではあるまいか。
秀作といっていいが、ラスト・ショットの意味がよく判らなかった。
「ハッピー・フライト」 ギャガ試写室
グウィネス・パルトロウ主演のアメリカ版「スチュワーデス物語」である。教官役はマイク・マイヤーズ。田舎娘の自己実現
コメディとして手堅くまとめられている。監督は「未亡人ドナ・フロールと2人の夫」(81)で注目されて以来、ブラジルと
ハリウッドと2つの地で仕事を続けているブルーノ・バレット。この人の作品、はずれがないかわりに決定打に欠けているように
思う。本作ではパルトロウのバストが大きく見えた。やはり豊胸手術の噂は本当か?。
27日(金)
「フォーチュン・クッキー」 ブエナヴィスタ試写室
母(推定45歳)と娘(15歳)の心と体が入れ替ってしまうというお話で、我が国にも「転校生」(82)「秘密」(99)という
秀作があり、ここでの魔法のきっかけとなるのは中国製の“おみくじクッキー”で、こうした入れ替わり話のオリジンは東洋の
方にあるのだろうか?。僕は不勉強で良く知らないのだが、ご存知の方教えて下さい。「ハッピー トウギャザー」で始まる歌曲
の使用法が良く、アヴリル・ラヴィーン風ファッションがおしゃれ。
「あなたも書ける恋愛小説」 ギャガ試写室
ロブ・ライナー監督最新作。ケイト・ハドソン、ルーク・ウィルソン主演。「恋人たちの予感」(89)の批評・興行両面での
成功によって良きにつけ悪しきにつけイメージが定まってしまったライナーだが、この人、本質的にはリアル派・日常派ではなく、
ファンタジー派・非日常派ではないかと思う。大げさにいえばメタ・フィクション志向の強い物語作家なのではないか。
ワンス・アポン・ア・タイムな物語をわすれてしまった現代人に説得力を持って語り直したいといった意識があるのではないか
と思われる。本作はオードリー・ヘプバーンの「パリで一緒に」(63)のような、小説家と速記者の恋に2人が作り出す物語が
入れ子構造となったラブ・ファンタジーとでも呼ぶべき作品である。「恋人たち〜」のイメージに捉われずに評価して良いのでは
ないか。
3月1日(月)
「ホーンテッド・マンション」 ブエナヴィスタ試写室
「パイレーツ・オブ・カビリアン/呪われた海賊たち」(03)に次ぐディズニー・ランド・アトラクションの映画化である。
エディ・マーフィ主演のコメディ・ホラーとなっている。ニューオリンズに南北戦争以前に建てられた古城が舞台で、黒人女性に
この役柄は無理があるとはいえようが、野暮はいわずに楽しんでしまえばいい。監督は「スチュアート・リトル」(99)「〜2」
(02)のロブ・ミンコフ。健全なファミリー・ピクチュアーである。