「最近見た映画 3月5日(金)〜18日(木)」
 

松村清志
                                      
  

         

 相変らずジョン・ディクスン・カー(別名・カーター・ディクスン)にはまっております。すでに32冊。<通>が喜ぶディクスン・
カー、<通>といえばカーってなもんだ。だが、カーはただのマニアックな作家では断じてない。例えば、「皇帝のかぎ煙草入れ」と
いう小説がある。これはカーの得意わざの怪奇趣味もドタバタのお笑いもない<普通>のミステリで、僕的にはカーとしては<普通>
の出来だと思うのだが、女王アガサ・クリスティーが「さすがの私もこのトリックには脱帽する」と絶讃した「名作」でもある。
 で、クリスティーが絶讃した事が理解は出来るのだ。ここでの心理トリック、女性の方がひっかかりやすいと思える。ヒロインは
要するに“だめんずうおーかー”であり、このタイプの女性がこの状況に置かれれば、この心理トリックにまんまとひっかかって
しまうだろうと思えてしまうのだ。クリスティーが“だめんずうおーかー”だったのかどうかは知らないが、彼女が絶讃したのは
おそらくそうした部分に本能的に感応したからなのではないか。ジョン・ディクスン・カーはかなり女性が判っていた人なのでは
ないかと思える。フェミニズム派のご意見をおうかがいしたい所です。

 それやこれやで読書にふけっていて見逃しが多いし走り書きばかりですまん。だが、4月からひとり強力な助っ人が登場予定と
なってますので、そちらに御期待のほどを。

 さて、最近見た映画です。

 3月5日(金)
 「永遠のモータウン」  映画美学校第1試写室
 ブラック・ミュージックの代名詞モータウン・サウンドを作った影の男たち、ファンク・ブラザースにスポット・ライトを当てた
ドキュメンタリーである。スモーキー・ロビンソン、テンプテーションズ、シュープリームス、マービン・ゲイ……そうそうたる
スターたちの、あの曲もこの曲もすべてバック・ミュージシャンとして演奏していたのがファンク・ブラザースであったのだ。
 栄光を支えた名も無き男たちの復権のドラマとして、60〜70年代という激動の時代の再考察のドキュメンタリーとして、とても
感動的であり、「ブエナヴィスタ・ソシアル・クラブ」(99)のようなラヴリー・オールドメンへの讃歌ともなっている。
 音楽にまるで興味が無い人でもここに流れる曲のどれかはどこかで耳にした事があるはずであり、僕はシンディ・ローパー経由
マービン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイン・オン」がチャカ・カーンで歌われるシーンに特に感動したし、ローリング・ストーンズ
でしか知らなかった「ダンシング・イン・ザ・ストリート」がマーサ・アンド・ザ・ヴァンデラスで流れるエンド・クレジットでは
とても元気が出た。2004年のグラミー賞でのファンク・ブラザースの特別功労賞受賞はうれしいニュースである。

 11日(木)
 「テディベアのルドヴィック」  映画美学校第2試写室
 「ブラザー・ベア」を楽しんだ後にはぜひ本作もとオススメしたい愛すべき映画である。大作「ブラザー・ベア」とは対極的な小品
で四季にわたる4つのエピソードを合わせても48分の上映時間だが、この小さくて判りやすい世界がとても居心地がよいのである。
 カナダのパペット(人形)・アニメーションの名匠コ・ホードマンが5年の歳月をかけて監督・アニメーション・撮影・脚本を
すべて1人でこなして作り上げたハンドメイド作品で、ほのぼのと心洗われる。子供から大人まで楽しめる詩情あふれる箱庭世界と
でもいおうか。特に僕は冬・春のエピソードの、人形が人形で遊ぶという2重構造を面白く見た。

 18日(木)
 「21g〔21グラム〕」  ギャガ試写室
 「アモーレス・ペロス」(00)のアレハンドロ・ゴンザレス・イニヤリトウが、ショーン・ペン、ナオミ・ワッツ、ベニチオ・デル
・トロというハリウッド・スターを使って撮り上げた第2作。手持ちカメラによる撮影と時制の解体と巧妙な編集で構成された秀作。
ショーン・ペンは「ミスティック・リバー」(03)と本作とで今年の主演男優賞は確定かなと思う。

 「ヒューマン・キャッチャー」  FOX試写室
 「ジーパーズ・クリーパーズ」(01)のパート2である。ロード・ムービー・ホラーであった前作に対してこちらは局地戦というか、
故障したバスの中に閉じ込もった若者たちとクリーチャーとの対決をメインとした<野外の密室>サスペンスの趣き。監督・脚本の
ヴィクター・サルヴァはヒッチコックの2作、「鳥」(63)と「救命艇」(44/未/V)を参考にしたそうだ。なるほど。アイディア
勝負のエンターテインメントとして楽しめる。サルヴァはたぶん巨匠にはなれないだろうが、ジョン・カーペンターのように撮り
続けて欲しいと願う。


  


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