『最近観た映画〜「ダニー・ザ・ドック」「クローサー」「最後の恋の始め方」「ドッジ・ボール」「PTU」』
松村清志
「ダニー・ザ・ドック」─ジェット・リー最新主演作。製作・脚本はリュック・ベッソン、監督は「トランスポーター」の人。
ギャングのボスのボブ・ホプキンスによって人殺し為の犬のように育てられたジェット・リーが、盲目の黒人ピアノ調律師の
モーガン・フリーマンとその義理の娘である白人娘との交流を通じて、人間的な感情に目覚めていくという、愛のアクション、感動の
アクションを意図して作られたエンターティンメントである。
ベッソンとしては「ニキータ」「レオン」の路線を狙ったのだろうが、やはり及ばずである。登場人物の心理が良く判らない部分が
あったが、それは僕の頭がわるいからではなく、脚本が雑な為であろう。アジア人、黒人、白人という人種模様に政治的な含みはない
し、フリーマンが盲目である事に寓意などあろうはずもない。劇画の映画化とでも思って気軽に楽しめばいい。
80年代初期あたりの香港映画のようなものを、今風のシャレた映像でやっているわけだが、アクション・シーンでカットを細かく
割り過ぎているのは、リーは動けるのに周りの人たちがあまり動けないのをフォローする為だろうが、いささか惜しい。人気バンドの
マッシブアタックが初の映画音楽を手がけており、小/中学生が映画に目覚めるには最適の作品であろう。
「クローサー」─大人向けのちょっとビターな恋愛ドラマ。ヒットした舞台劇を作者自ら映画用に脚色し、舞台・映画の両方で、
輝かしいキャリアを誇るマイク・ニコルズが監督を手がけている。
ジュード・ロウ、ジュリア・ロバーツ、クライブ・オーウェン、ナタリー・ポートマンの共演、オーウェンとポートマンは本作で
ゴールデン・グローブの助演賞を受賞。登場人物の心理が良く判らない部分があったが、それは脚本が雑な為ではなく、僕の頭が悪い
ためであろう。緻密に構成されたドロマであり、ロンドンの野外ロケ・シーンの良さや、後半部の時間解体モンタージュなど、舞台劇
の映画的アレンジもうまいと思えた。
男の情けなさが辛らつに描かれているようなあたり、いささかつらくはあるが、観応えはある。4人の中では僕敵にはストリッパー
役のナタリー・ポートマンにいちばん好感を持った。彼女主演で韓国映画「悪い男」のハリウッド・リメイクを観たいと思うが無理
か。
「最後の恋のはじめ方」─「クローサー」と比べるとぐっと気軽に観られる恋愛ドラマ。ウイル・スミス扮する主人公ヒッチは、
女性の扱い方の判らない男性に恋愛必勝法を教えるデート・コーチを職業とする男。その彼が本気で惚れたエバァ・メンデスと思った
ようにうまくいかない姿と、スミスが恋愛コーチする巨漢とセレブの女性との関係という、2組のカップルの恋のゆくえを並行して
描いて、ハリウッド映画らしいハッピー・エンドに着地するエンターティンメントである。この内容で2時間近い上映時間はちと長い
が、初デートのカップルが安心して見られる映画ではあろう。
「ドッジ・ボール」─アメリカ・メジャー映画初のドッジ・ボールを題材としたスポーツ・コメディである。90分余りにまとまった
上映時間でコスプレ・チームや敵役ベン・ステイラーのアホなマッチョの怪演などで、ノー天気に楽しめる。軽すぎて観終わってすぐ
忘れてしまうのが難点だが(あれっ、主演は誰だっけ?)、「がんばれ!!ベアーズ」などが好きな人にはオススメ。
「PTU」─「ざ・ミッション/非状の罠」のジョニー・トー監督の新作。「ザ・ミッション〜」に比すべき88分というタイトな上映
時間でまとめられた、ストイックかつスタイリッシュ、クールなフィルム・ノワールの秀作である。ジョニー・トーは80年代から
数多く撮り続けており、なかにはかなりトー変木な映画もあったが、いつのまにかトーイズムといつていい作家性を確立してきた
ようだ。今後も注目しておこう。コメディではないのに刑事がバナナの皮ですってんころりんしてしまうのはやはり香港映画らしい
センスか?。