さよなら、さよならニューヨーク……「僕のニューヨークライフ」

 

                                                                               桑島まさき



 40年近い映画人生の中でニューヨークを舞台したコメディーの傑作を次々と送り出してきたウディ・アレン。アカデミー賞に
ノミネートされること数知れず、多くの役者たちに「アレン映画に出演したい」と思わせる独特の都会派喜劇を確立してきた。
ニューヨークをこよなく愛し、そこに暮らすニューヨーカーたちの喜怒哀楽をユーモアと皮肉を交えて描いた作品群は、世界の大都市
ニューヨークを知るには最高のドラマだったが、遂にアレンはニューヨークを卒業する! 諸々の事情により映画環境のイイ(?)
ロンドンに拠点を移すそうだ。という訳で、本作はアレンのニューヨークへの特別な思い入れタップリの作品とも言える。

 マンハッタンに住む21歳のコメディ作家のジェリー(ジェイソン・ビッグス)。そこそこの仕事をしながらもジェリーは、書き
とばす仕事よりも、じっくりとシリアスな小説を書く小説家に転身をはかりたいと思っている。恋人はセクシーな女優の卵アマンダ
(クリスティーナ・リッチ)。互いに恋人がいながらビビッと一目惚れしすったもんだの末同棲生活をしているものの、気まぐれな
アマンダに振り回されてばかりいるジェリー。惚れた弱みとはいえ苦労がたえない毎日。その上、半年もセックスレス。
 そんなある日、アマンダの母が行くところがないという理由で二人のアパート(正式にはジェリーのアパート)に転がり込んできて
仕事が思うようにできない。母親のポーラ(ストッカード・チャニング)は娘同様気まぐれで遠慮がない。悪いことに、今度は
アマンダの浮気疑惑が浮上する。何でも相談できるドーベル(アレン)の進言だが。意を決してアマンダを追求すると、女優はサラリ
と浮気を認める。無垢なのかしたたかなのか、大きな瞳を潤ませ、全てあなたのためなのよーと可愛く言い訳する(ホントに男は
こーいう女に弱く単純!)アマンダを許すしかないジェリーだが……。

 仕事でもプライベートでも悶々とした日々のジェリー。そこへ思いがけずオイシイ話が…。カリフォルニアで新しい仕事に
かかろう! やりがいのある仕事をとるか、ニューヨークを捨てるべきか。まずジェリーがクリアしなければならないのは、
マネージャーのハーヴィ(ダニー・デヴィート)を切ることだが、たった一人のクライアントであるジェリーを離したくない彼は
必死。レストランで修羅場が繰り広げられるのだが。今や監督、プロデューサー業に忙しいデヴィートは、依然として個性的な演技で
魅了する。次はアマンダの問題。はたして、ジェリーは古いしがらみを捨てて新しい人生へ向かって出発できるのだろうか? 
 アレン自身の「現在」を等身大で演じるのは「アメリカン・パイ」でブレイクした若手実力派のジェイソン・ビッグス。縦長の顔に
長い鼻。パーツパーツは悪くないのだが配置に問題あるためコメディー向きの彼は、親しみやすさと朴訥とした雰囲気で好演する。
 ドタバタ続きのサヨナラ劇も蓋をあけてみれば案ずるほどのことはナシ。そんなもんさ人生って! アレン特有のシニカルな視点は
健在。失ったモノは沢山あるがサラリとかわし新世界へ向けて旅立つジェリーは、アレンの第二の映画人生へ向ける姿勢そのもの
だろう。実生活でもニューヨークで数々の悲喜劇を演じてきたアレンの新境地ロンドンでの物語に期待したい。
 さよなら、さよならニューヨーク!!

 *2006年1月20日頃 恵比寿ガーデンシネマにて公開予定


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