映文振センターレポート 「文化映画上映会 第4回」


桑島まさき



                         

 今年は棟方志功の生誕百年。志功の偉大なる功績を記念して日本各地で展覧会などのイベントが開催されている。強烈に人を
惹きつけてやまない志功のその天衣無縫でエネルギッシュな作品群。映文振センター主催「文化映画上映会 第4回」が、4月10日、
東京ボランティア・市民活動センターで開催され、「彫るー棟方志功の世界」が上映された。
 ねぶたや凧絵に描かれる鬼の面。鬼門。東北の方角は、陰陽道では鬼が出入りすると考えられ、不吉な場所として畏怖されてきた。
志功の生まれた津軽の美しくも厳しい風雪風景、アトリエでの創作風景、日常風景など1年4ケ月にわたり志功を追いつづけたカメラ
から映し出されるのは、鬼門を押し広げてでも生きねばならない津軽人の情熱だ。そこには、絵の具も紙も買えず道路に絵を書いていた
少年時代の志功がいるだけだ。聞き取れない津軽弁で朴訥と話し、創作に没頭する彼は、無邪気な子供そのものだ。板に覆い被さる
ように無心に彫るその手技の素早さはむしろ職人的。下絵を書く速さは超人的。天職を楽しむ喜びに溢れ、さながら<他力>が彼を
動かしているかのようだ。
 上映会の後、本作を撮った故・柳川武夫監督の娘で女優の柳川慶子さんをお招きし、映画評論家の渡部実さんがお話を聞いた。
 75年製作の本作。「短編文化映画というとマイナーな位置付けがなされがちだが、この作品は国内の賞を総ナメにし海外の映画祭でも
グランプリをとるなど、日本の短編文化映画が世界で認められた記念碑となった作品だ」と渡部さん。
「父も絵かきになりたかった人です。映画作家としての父にとって棟方志功さんは、情熱と人間味に溢れた魅力的な存在だったと
思います。作品には熱いエネルギーが横溢し何度観てもその迫力に圧倒されます」と柳川慶子さんはコメントした。
 撮影当時は志功72歳。既に片目の視力を失っているが創作をする歓喜に溢れている。同年9月<世界のムナカタ>は不帰の客となった。
志功の魅力とその偉業を生存中に収めた稀有のフィルム。その価値は大きい。              

 *「キネマ旬報」2003年5月下旬号より転載 



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