「ホストタウン エイブル2」記者会見レポート 桑島まさき
毎日映画コンクール記録文化映画賞を受賞した「エイブル」の小栗謙一監督の最新作は、その続編とも連作ともいえる知的障害者
たちの無限の可能性をカメラに収めたドキュメンタリー「ホストタウン エイブル2」。
2003年夏、アイルランドで開催された知的障害者のための国際的スポーツの祭典“スペシャル・オリンピック夏期世界大会”
のために日本人選手団の“ホストタウン”となったダブリン郊外の小さな町、ニューブリッジという町に暮らす知的障害者(ダウン
症)のエイミー。本作は、12人兄弟の中で2人(エイミーとリンジー)も障害者を抱えるパーセル家の家族の歩みを辿りながら、
2人を支えてきた家族のインタビューや日常を丁寧に積み重ね、スペシャルオリンピックを控えホストタウンとなった町の賑わいや、
オリンピックの模様などをぎっしり盛り込んだ奥の深いドキュメントだ。
3月29日、本作の記者会見が東京の草月会館で開催された。出席者は、出演者のパーセル家から父、母、リンジー、リディア、
エイミーの5人、小栗謙一監督、NPO法人スペシャルオリンピックス日本理事長の細川佳代子さん、スペシャルオリンピックス
日本アスリートの梅沢花美さん。
主人公のエイミーは19歳。スクリーンでは丸くぽっちゃり顔に見えるが、実物はとても小さな顔で輝くばかりの金髪をもつ
キュートな女の子だ。作品同様、障害を持っているとは思えないほど明るく溌剌とした印象を受ける。
小栗謙一監督の前作「エイブル」同様、本作でもプロデューサーを務めた細川佳代子さんは、スペシャルオリンピックの意義に
ついて、「日本と違い欧米では身障者はとても明るく前向きだ、日本もなんとかならないものかと模索しているうちに、スポーツに
触れることによって意識革命する運動として誕生した」と述べる。
本作の主軸となる2003年夏、アイルランドで開催されたスペシャルオリンピック夏期大会には、166の国と地域からアスリート
が集まった。60年代に始まったこの大会は、今では知的障害者の可能性を試す国際的な舞台として注目されている。作中でも大会の
模様が収録されているが、身体に障害がない彼らの運動能力のレベルは(競技にもよるが)さほど健常者の大会(通常の
オリンピック)と差があるとは思えない。選手の一人が、皆さんが思う以上に私たちは可能性があります、とスピーチしているが
確かにそのとおりだ。何故、私たちは勝手な思い込みで彼らのレベルが低いなどという考えを持ってしまったのか、と思わず恥じず
にはいられない。
スペシャルオリンピックスはメダルの数を競わない。一人一人が限界に挑戦し、ベストを尽くすことを理念としているそうだ。
又、細川さんは「ある日、知的障害者=弱者として見ていた自分がいかに傲慢だったかに気づき、人生のモノサシが変わった。
健常者の方が知的障害者だと思うことが多々ある。常に利害ばかり考え邪心だらけ。一方、彼らはピュアで優しく思いやりに溢れて
いる上等な人間だ。彼らと一緒にスポーツを通して行動すると、障害者も健常者もなく同じ目線でモノをみることができるように
なる」と付け加えた。
小栗謙一監督は、「障害をもった人々に対する社会の認識は間違っている。その呪縛から解放され、固定観念を払拭することの
重要性を、この映画を通じて理解し伝えて欲しい」と述べた。
パーセル家のもう一人の障害者リンジーは脳性マヒでギブスが必要。インタビュー中、本音を語りホロリとなるシーンもあるが、
将来は自分と同じ障害者のために役立ちたいと思っている。エイミーはセクレタリーになるための訓練を受けている。なかなか上手
に電話応対ができないが、徐々に巧くなってきている。フツーの人々同様、彼らにも可能性が満ち溢れている。
障害者を抱えた家族の在りようとしても参考になるだろう。母のジョージーはエイミーがダウン症だとわかると絶望し途方にくれた
と語るが、いつしか育てる不安は、強い意志へと変わった。夫のパディは軍人だが、アル中になった時はお金を一銭もいれないことも
あった。貧乏人の子沢山、しかし家庭の中はいつも笑いが絶えない。なにせ子どもが12人だ。パーセル家の人々は、エイミーや
リンジーに対して特別扱いはしない。同じように社会も彼らのような身障者を同じ目線で見つめることが肝心なのだ。“身障者
だからデキない”などと考えたりせずに。
あなたがデキることは、身障者だってデキる可能性がある。本作はそう教えてくれる。
*4月24日より 渋谷シアター・イメージフォーラムにて公開予定