映文振センター 第3回文化映画上映会レポート                              

 桑島まさき

 NPO法人日本映画映像文化振興センター(略称:映文振センター)が主催する文化映画上映会第3回が、12月19日、飯田橋の東京ボランティア市民センターで開催された。上映作品は79年近代映画協会製作の「インドの星 マザー・テレサとその世界」。上映会の後、本作の監督である千葉茂樹さんに映画評論家の渡部実さんがお話を聞いた。
 ロレット修道会聖マリア高等学校で校長の地位にもついたマザー・テレサが、ポケットにわずか200円相当の現金をもってカルカッタのスラム街に入ったのは38歳の時。飢え、貧困、病気が蔓延し、路上に生き倒れの人々が溢れる世界最悪の居住地区だ。そこで最も貧しい人々に仕え、共に生きるために修道会を出てスラム街に入ったのだ。映画は、マザーと「愛の宣教者たち」のシスター、ブラザーたちが「死を待つ人のホーム」で行う奉仕活動を中心に描いていく。

 「『死を待つ人のホーム』に運ばれた人を、まずシスターたちが名前と宗教を確認しているのが印象的でした」と渡部さん。 「これは死後の葬送のための確認です。ここには今にも死に向かう人々が毎日沢山運ばれてきます。シスターたちは、そんな彼等に、治療を施し食事を与え、あなたは望まれて生まれてきた大切な人なのだとわかってもらう。死にいく瞬間、彼等はやっと人間的な扱いを受けることができるのです」
 瀕死の状態の人々にカメラを向けた千葉監督は、凄惨な情況と対峙しながらも、その瞬間、彼等の顔に宿った生の輝きが感動的だったと話す。  

 マザーは言った。「この世の最大の不幸は、見捨てられ、それによって自分は誰からも必要とされていないと感じること」だと。マザーたちの献身的な行為は、単なる医療活動ではない。見捨てられた人々を見たら私たちはどうすればいいか。一対一(あなたと私)の関係こそ大事だと説いたマザーは、救いを求める人々がいれば世界中どこへでも飛んでいく。マザーは言う「私たちの働きは、大海の一滴の水に過ぎないかもしれません。でも大海も、一滴の水なしには大海にはなりません」
 マザーそしてインド政府との交渉に、製作開始まで難航を極めた本作。オールインドロケを敢行し、その活動をカメラに収めた功績は実に大きい。ちなみにマザー・テレサはこの直後にノーベル平和賞を受賞している。「マザー・テレサとその世界」には奉仕の原点がある。体験学習が叫ばれる今、小学生・中高生に是非観てもらいたい作品だ。 




                 ※「キネマ旬報」2003年2月上旬号より転載        

 
   

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