青春は 勝っても負けても 熱い夏……「恋は五・七・五!」
桑島まさき
「バーバー吉野」の若手女性監督、荻上直子の監督二作目となる「恋は五・七・五!」は、何かに夢中に取り組むことの素晴らしさ
をユーモラスに描いた秀逸な青春エンターテインメント・ムービーだ。
静岡県のとある高校。2年生の高山治子(関めぐみ)は帰国子女。美人でスタイルがよくズケズケものを言う大人びた高校生だ。西欧
の教育を受けたせいか日本の同年代の男女が幼稚にみえて馴染めない。そんな彼女に憧れる男子生徒も女子生徒も多い。でも治子には
何の関心もない。ひょんなことから俳句部に入ることになった治子は不機嫌そのもの。元々、俳句部なんてこの学校には存在
しなかった。学校が統廃合される前になんとか母校の知名度を残しておきたいという校長先生の計らいで、野球部が甲子園出場を
果たせなかったものだから、今夏開催される「全国高校生俳句甲子園大会」(以下、「俳句甲子園」と表記する)に出場して母校の
名前を全国に轟かすよう目論んでのことだった。使命を受けたのは、生徒に軽んじられているマスオ先生(杉本哲太)。
俄かに結成された俳句部。部員はよせ集め。ところで「俳句甲子園」とは何なのか? 不勉強の筆者も初めて知ったのだが、俳句文学
を重んじる風土が根付いている愛媛県松山市で毎年8月に開催される正式な競技会だそうだ。2004年には7回を迎えたらしいのでその
歴史はまだ新しい。その俳句甲子園に出場するためには5人の出場者が必要なので最低でも部員は5人いないとならない。治子他、
甲子園の夢破れた山岸、治子に片思い中の写真部の土山、デブだからチアリーダー部をやめてくれと先輩たちに言われて自暴自棄に
なっていたマコ、治子に憧れる1年生のPちゃん。俳句の心得があるのは山岸のみ。他の4人はいやいや部活に参加して俳句を初歩
から学び自分なりの作品を創作していくのだが。昨年の優勝高の古池高校へ見学へいくと、さすが伝統高だけに練習は本格的。
さながら体育会系の練習のようにキビキビして、部員も高慢で若いのに老けた男子生徒ばかり。顧問を演じる嶋田久作が不気味さを
漂わせ圧巻。実力の差を見せつけられ自信喪失しすっかりしょげかえる部員たちだが、気の弱いマスオ先生は、楽しんで詠んだ俳句は
しっかり伝わるはずだ、と力づけてくれるのだった……。
いつしか俳句の楽しみを覚え何かに夢中になることの喜びを覚えていく部員たちの夏がまぶしい。大会のために合宿をし、思い思い
の俳句を綴りながら芽生えた友情、そして淡い恋。ジジイやオバアがやるものと思っていた俳句にハマった5人は、夏は疾走する。
これぞ青春だ!
そして俳句甲子園の日が訪れる。全国から集まった高校の個性がまちまちで、大会の様子もしっかり描かれ面白い。俳句に興味のない
筆者も思わず引き込まれた。飄々とした演出にユーモアが光る。荻上監督の目のつけどころに感服した。
土山役を演じる細山田隆人以外は、本作が映画デビューになる俳句部員たちの初々しい魅力を、杉本哲太、柄本明、高岡早紀、
もたいまさこといったベテラン陣がしっかり仕事をし盛り上げる。
*3月下旬 渋谷シネ・アミューズにて公開予定