「ラブ・コレクション」
桑島まさき
6人の監督による6つの愛の物語「ラブ・コレクション」。それぞれの作品は確かに小品という感は否めないが、しみじみと胸に
染入る感興を催す作品ばかりで、監督たちの個性がにじみ出ている。
「blue」の安藤尋監督の「ココロとカラダ」は、多感な時期にレイプされた恵子(未向)と彼女を助けた知美(阿久根裕子)と
いう二人の女(女と呼ぶにはまだ青すぎるが)の友情と、傷ついたココロとカラダの矛盾を描き興味深い。
恵子はレイプの傷が癒えることなく都会にでてカラダを売って暮している。そんな恵子の元に、学校卒業後ずっと連絡をたっていた
知美が居候することになる。恵子の留守中に、彼女の客(恵子は好意をもっている)の西山(池内万作)が訪れてきて、恵子が
どんな生活をしているかを知り愕然とする知美。しかし、知美はすぐに「自分にも恵子と同じようにしてくれ」と頼み、処女を西山
に奉げてしまう。何だろうなーこの行動、この心理! 大事な友達の恵子がレイプの後遺症として投げやりな人生を送っている(?)
なら自分も同じように、という友情から、と考えるのがふさわしいようだが、だとしたらここまで友人のために自身の人生を決定
することができるだろうか? 西山との事をしり怒った恵子に怒鳴られ殴られても知美は友人の元を去ろうとせず、恵子と同じ世界
へ自分も入っていく。
楽に収入を得ることはできても満たされることはない。いやそれどころか、危ない客に遭遇し、カラダもココロも傷ついていく。恵子
が流産するシーンのリアルさは生々しい。都会の空の下、傷ついた二人が寄り添うシーンは、寂寥感漂いむなしい。そして二人は途方
もない計画をたてるのだが…。
「アンテナ」の熊切和嘉監督の「揮発性の女」は、時間がとまったように何の変化もない虚しい生活をしていた中年女が、ふとした
ことからであった男との愛にすがりつき溺れていく物語だが、やるせない孤独の辛さ、期せずして訪れた恋へのめりこんでいく中年女
のエロスや哀しさが描かれている。
夫をなくし一人でガソリンスタンドを営み寂しく暮している悦子(石井苗子)の毎日は、本当にわびしい。都会の田舎のような静かな
町。近くに農道があり、人家もぽつりと点在するだけ。化粧もせずただ淡々と時々訪れるお客に対応するだけ。一人でご飯をたべ一人
で淋しく寝るだけ。そんな寂しい毎日に闖入してきた理一(澤田俊輔)が犯罪者でも、孤独なココロに触れてくれる男なら悦子に
とってはいとおしい。
二人分のご飯を用意し、着替えを用意し、傍にいてくれる男がいるという充足感。年の差の不自然さをこえ、男の温かさに触れ思わず
泣き出す悦子を、かいがいしくなぐさめる理一の優しさにホロリとくるのは、孤独の辛さを知っているものなら納得できるだろう。
久し振りに石井がスクリーンに登場し、二度と訪れないと思っていた遅い恋の火が発火し情炎に変わっていく様を自然に演じる。
「田舎のオバチャン」から化粧をし「知的でステキな熟女」へと変身し。
現在公開されているデンマーク映画「恋に落ちる確率」は、2003年カンヌ国際映画祭批評家週間出品、カメラドール受賞、批評家
週間最優秀作品賞を受賞したばかりか、世界の映画祭で数々の名誉に輝いている。
カメラマンの仕事も順調、かわいい彼女もいる、友人も多い。満たされていたアレックスはある日、美しい女性アイメと出会い、運命
の恋と確信し、情熱にまかせて彼女の後をおう。そしてあたかもこーなるのが必然だったかのように、言葉をかわし、一夜を共に
する。恋のときめきに幸福を実感していたアレックスだったが、それ以来不可思議なことが起きる…。 時間軸が分解されボーとして
いると混乱する作品なのでしっかり集中して観賞することをお勧めしたい。ともかく、映像の美しさが突出している。アイメを演じる
マリア・ボネヴィーは古き時代のスター女優の雰囲気を醸し出す気品のあるヨーロッパ的な女優だ。メチャ美貌の持ち主という訳では
ないが雰囲気のある美人、例えばグウィネス・パルトロウのような。金髪のクールビューテイー、真っ赤な口紅に黒いコート。アイメ
とアレックスのセックスシーンの美しさといったらない。
クリストファー・ボー監督という新たな逸材が、デンマークから登場した。
「愛」「LOVE」…人の数だけ愛がある。だから愛の形も物語も人それぞれだ。
*「ココロとカラダ」…12月11日より 渋谷シネ・ラ・セットににて公開中。(www.love-colle.com)
「揮発性の女」…12月25日より 渋谷シネ・ラ・セットにて公開予定。 (www.love-colle.com)
「恋に落ちる確率」…12月11日より シネセゾン渋谷にて公開中。