愛しすぎる女たち……「Mの物語」「なぜ彼女は愛しすぎたのか」

桑島まさき

 




 愛はすばらしい。愛を知る人は豊かな人生を送ることができるだろう。でも何故、人は愛しすぎてしまうのか? 壊れてしまう前に
ブレーキをかけることができないのか? あまたの恋愛映画の中で狂恋の果てに幸福を見出した女たちはこれまで何人いただろうか?
 エマニュエル・ベルコ監督・主演作「なぜ彼女は愛しすぎたのか」を観て、ことさらそういう気持ちを強くもった。
 
 30歳の女と13歳の少年の恋。と言っても、既存の恋愛映画で描かれてきた思春期の少年と<年上の女>との恋…いつしか成人した
かつての少年が鼻腔をくすぐるようなノスタルジックな想い出として切なく甘美なひと時に浸るであろう…ではなく禁断の恋だ。
少年の一途なモーションに最初はとまどいがちだったヒロイン(マリオン)は、仕事も恋も順調だったが、いつしか立場は逆転して
少年に溺れていく。思春期の少年にとっては一過性の情熱だ。熱が醒めるとその時期特有の気まぐれで残酷にマリオンを突き放す。
分別のあるはずの大人のマリオンは歯止めがきかず、なりふり構わず少年を追いかける。その“狂った”恋の顛末は哀れという
他なく、後味の悪さばかりが残る。何故、愛し過ぎたのか?

 「美しき諍い女」のジャック・リヴェット監督の新作「Mの物語」のヒロイン(マリー)も、愛というより執着の果てに狂恋に
走った女だ。しかし愛の地獄へ陥いる過程は描かれず、“その後”が描かれる。時がとまったような時計職人の家、猫、不可解な
行動をとるマリー、情熱的に愛し合いながら淫らな物語を語りあう2人…登場人物は少なく無駄な音楽は使用していない、演劇的な
演出だ。全てに謎めいていてマリーという女の物語は分りづらいが、マリーの選択に女の深い愛を見て救われる。     


 *「なぜ彼女は愛しすぎたのか」…8月下旬、シブヤ・シネマ・ソサエティにて公開予定
  「Mの物語」…7月下旬、銀座シネパトス他全国順次公開予定


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