日本国憲法への想い−世界の人々はこんなふうに日本の憲法をみている
……「映画 日本国憲法」


                                                                               桑島まさき

 2005年は戦後60年目にあたり、各地で「戦後」「日本の未来」「憲法」について再考する催しが行なわれているようだ。殊に、憲法
をめぐる「改憲」か「護憲」かについての議論は、この国の行方を左右するキーとなるだけに壮絶だ。
9.11のテロ後にノーム・チョムスキー氏にインタビューした「チョムスキー9.11」を撮ったジャン・ユンカーマン監督の新作は、
「映画 日本国憲法」。憲法とは誰のためのものか? 戦争の放棄を誓った前文や「第9条」の意味は? 自衛隊のイラク派兵、国会
での圧倒的多数による「改憲」への動きが顕著なだけに、平和憲法の意義について、世界の見識者たちに監督自らがインタビューし、
日本国憲法を考えるといった構成になっている。
ユンカーマン監督は、アメリカ人。ジャーナリストのかたわら映画作家としても活躍している。インタビューされる人々は、社会学者
の日高六郎氏以外はすべて外国人。つまり、世界の人々の視点で日本国憲法を考える試みだ。試写最終日、来日中のユンカーマン監督
が「歴史をきちんと学んだ上で改憲か護憲かについて論議すべきだ。改憲が具体化しつつある中で世界の中の日本国憲法について、
日本人である皆さんが自分たちの憲法について、再度考えて欲しいという願いからこの作品を作った」と流暢な日本語で挨拶した。

 最初に登場する「敗北を抱きしめて」の著者、ジョン・ダワー氏は、戦後の1945年にアメリカが敗戦国日本に憲法を制定して
おいて、その後1950年に朝鮮戦争が勃発するやいなや、日本に平和憲法を制定したことを後悔し当時のニクソン大統領が、「平和憲法
を日本に作ったのは誤りだった」と発言するに至ったアメリカのご都合主義をシニカルに非難する。
沖縄を拠点に執筆・講演活動を続ける作家で政治学者のC・ダグラス・ラミス氏は、「日本に基地がある限り、アメリカに追従して
<戦争>に参加する日本は、アメリカの味方として攻撃を受ける可能性は十分にある」と語る。すわりこんで改憲を阻止しようとする
沖縄の人々の懸命な姿と対比するように、ブッシュ大統領とにこやかに手をとりあってくつろぐ小泉首相の姿、そしてブッシュ大統領
にまとわりつく子犬の映像を映し出す。子犬に例えられた日本国首相は、どのような思いで本作を観るのだろうか?

 アジア政治学者のチャルマーズ・ジョンソン氏は、「武力行使の放棄を誓った第9条こそが、日本のアジア諸国に対する戦後謝罪
だったのです。第9条の放棄は謝罪を放棄することです」と述べ、日本に侵略された国々の代表として中国から作家で映画監督の
バン・チュンイ氏、韓国から女性運動家のシン・ヘス氏、聖公会大学人権平和センター所長のハン・ホング氏、歴史研究者のカン・
マンギル氏が、アジア諸国の平和維持のために日本国憲法の「第9条」が存在することの意義を力説する。
かつて日本の軍隊によって性被害を受けた老齢の女性達は言う。「指を切った痛みを知る者なら、私たちが受けた痛みの深さを知る
はずだ。同じ心をもった同じ人間ならば……」。かつての日本軍の蛮行を忘れたくても忘れられない人々の証言は深く胸を打つ。
いつの世も戦争を始めるのは男たちだ。だが、忘れてはいないだろうか? 戦争は天災とは違い、止めることができる人為だ。野蛮な
時代へ退行しないように、日本人である私たちはまず、歴史と私たちの国、日本の憲法とその経緯をしっかりと知るべきだろう。

 *7月2日より ユーロスペースにてモーニング&レイトショー(10:00と21:00)公開予定


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