『リメイク&オマージュ あるいは“継承盃映画”〜「真夜中のピアニスト」
「バッドアス!」「マカロニ・ウエスタン 800発の銃弾」』
松村清志
今年も半分終ってしまったという書きだしで始めようと思っていたら、もう残り3か月足らずとなってしまった。早過ぎる!!観逃
した映画が多過ぎる。観たい映画も読みたい本も書きたい事もいっぱいあるのに時間が無さ過ぎる!!
というわけでまとめて走り書きだ。すまん。
「真夜中のピアニスト」――水島裕子さんオススメのフレンチ・ノワールだが、元ネタはジェームス・トバック脚本・監督、
ハーヴェイ・カイテル主演の「マッド・フィンガース」である。フランス映画のアメリカでのリメイクは多々あるが、逆のケースは
珍らしい。「マッド〜」は公開時の日本では白井佳夫がホメたぐらいでさほど話題にならなかった知る人ぞ知る作品だったが、
フランスでは注目されカルト化していたのだ。フランス人のセンスはあなどれない。
はるか昔に観た印象のままに比較して感想を述べてみると、演出的にはオリジナルの方がいいが、物語やキャラクターとしてはこちら
の方が興味深い。中国人のネエちゃんの使い方などもうまい。オリジナルの主人公はおよそ女性受けするキャラではなかったが、その
辺もうまくアレンジされているのではないか。
ジェームス・トバックという人はそのうちブレイクするのではないかと秘かに思っていたが、「マッド〜」の後80年代末ぐらいに
「ピックアップ・アーチスト」というナンパ師を主人公としたラブ・コメディを1本撮ったきりでどっかにいっちまった。
「熱い賭け」という大学教授とギャンブラーの2重生活をおくる男を主人公とした秀作の脚本もこの人だった。名前通り人生は賭博の
ようなものだと考えていたのか、その後の消息を知っている人がいたら教えて下さい。
水島さん、いつもたくさん原稿いただいたり官能文学の書評をお願いしたりと、いつもお世話になってます。今後ともよろしくです。
「バッドアス!」――メルヴィン・ヴァン・ピープルズの、黒人の黒人による黒人の為の映画「スウィート・スウィートバック」の
製作舞台裏を、息子のマリオが映画化した70年代テイスト満載の秀作。「スイート〜」と並んで渋谷で上映されているので2本とも強力
プッシュしたい。ブラック・パワーのオリジンを知れ!!
作品評を書くヒマがないので話をとばしてまたもやイーストウッドネタをひとつ。マリオはイーストウッドの「ハートブレイク・
リッジ/勝利の戦場」に出演していたけれど、マリオの初監督作「ニュー・ジャック・シティ」の実現を映画会社の重役にプッシュ
したのはイーストウッドだとの事。律儀な奴だ。
ほいでもって気になるのは「許されざる者」の脚本を執筆したデビット・ウェッブ・ピープルズという名前である。
「ブレードランナー」の脚本もこの名前だったが他で聞いた事はない。「許されざる者」でのモーガン・フリーマンへのシンパシー
ある描写や、「ブレード〜」が逃亡奴隷の物語であったあたりから察するにどうも黒人くさいという気がするし。もしかしたら
メルヴィン&マリオの父子と何か関係があるのではないかと思うのである。どなたか知っている人がいたら教えて下さい。
「マカロニ・ウエスタン 800発の銃弾」――3年ほど前に輸入されながらも“韓流”ブームのまきぞえをくって公開が延び延びに
なっていた作品の待望の公開である。
今時、マカロニ・ウエスタン、しかも監督がヘンな映画ばかり撮ってきた異能の人となれば、アレックス・コックス監督「ストレート
・トゥ・ヘル」のようなひねった作品となっているだろうと予想していたのだが、きわめてオーソドックスな映画愛とジャンル愛に
支えられた仕上がりであった。
赤くソラリゼーションされたステイル・ショットのタイトルに、スパニッシュ・ギターとカスタネットでアレンジされた「続・夕陽の
ガンマン」のテーマ曲がかぶさるオープニングなどワクワクしてしまった。
撮影所の取り壊しに反対して実弾入りの銃を手に立てこもるスタントマン達の姿が、さながら黄昏西部劇の最後の闘いに命を賭ける
時代遅れの男たちの姿に重なって見えてくるのである。まるで似ていないクリント・イーストウッドのそっくりさんが登場するエド・
ウッドなセンスも(?)もほほ笑ましい。
映画愛とジャンル愛だけでなくジイさんと孫との関係性なども含めて、「バッドアス!」と並べて“継承盃映画”と呼んでみたい。
優駿さん、いつも書き込みいただいたりメールいただいたりご声援ありがとうございます。ご返事出せなくてごめんなさいね。
今後とも、よろしくです。