人生をゲームに支配された世界一なかのいい二人
……「世界でいちばん不運で幸せな私」
桑島まさき
「第12回フランス映画祭横浜2004」で観た本作「世界でいちばん不運で幸せな私」。上手いタイトルなのかそうでないのか、
ソフィー・マルソー主演の「私の昼はあなたの夜より美しい」のように、観てみないと判断できないような、いかにもフランス的な
タイトルではないか。しかも観念的で観る者にちょっと首を傾げさせるような。
だが、本作は実にわかりやすい。監督のヤン・サミュエルは本作が監督として長篇第一作となる。イラストやポスターなどを描き、
マンガや絵本も執筆する多彩ぶりだ。その多彩さは本作にしかと活かされている。メルヘンチックなお話、スピーディーで
ファンタジックな映像、ユーモラスな会話などしっかり楽しめる。
これはある幼馴染の男女の物語だ。ジュリアンとソフィー。ジュリアン(ギョーム・カネ)はクラスでイジめられていた移民の
少女ソフィー(マリオン・コティヤール)に、病がちなママからもらったキュートな缶をソフィーにプレゼントする。ソフィーは
イジメられっ子だが勝気でオマセな女の子。ジュリアンの母が死に、何時の間にか一緒にジュリアンの家で成長した2人はいつでも
この曰くつきの缶をめぐって相手がしかけるゲームに乗るという賭けを始め、お互い好きあっているのに気持ちさえも正直に話せず、
ゲームだと勘違いしてしまう。いい雰囲気になっても“どうせゲームなんだ”と解釈し、仲がよすぎて愛を意識することのできない
2人だ。
人は留まってはいられない。進んでいかなくてはいけない。いつも一緒だった2人に転機が訪れる。ジュリアンは進学の準備で
忙しく、ソフィーは貧しいため働かなければいけない。そういう雰囲気になっても、イニシアティブは常にソフィーがとり続け、
美しい青年と娘になっても2人はゲームに支配され<兄弟のような親友のような友人>から<恋人>になれない。世界で一番近い2人は
なかなか結ばれない…。
ソフィー役のマリオン・コティヤールのパッチリした華やかな風貌が印象的で、大胆な行動でジュリアンを驚かせる肝っ玉の
すわった女役を好演している。結末は幸福な…とだけ記しておこう。マリオン・コティヤールは「ビッグ・フィッシュ」でビリー・
クルダップの婚約者を演じていたが、本作はそこはかとなく「ビッグ・フィッシュ」に作風が似てなくもない。好意的に観た。
*9月25日より シネスイッチ銀座、関内MGAにて公開予定