黒社会に咲いた儚くも気高い男たちの友情と絆……「ベルベット・レイン」
桑島まさき
この原稿を書いているのは8月17日。世の中は選挙に関するニュースで騒々しく、関東地方に続き東北地方を地震が襲い、依然と
して落ち着かない日々を過ごしているのであります。が、少し前、WOWOWで放送していた故・深作欣二監督の代表作「仁義なき
戦い」を一挙放送中5作ほど観たのだが、偶然か選挙速報も連日「“仁義なき”選挙」などと銘打っていた。どこが??
で、筆者はこれらが大ヒットした70年代に学生で多忙だったのでほとんどリアルタイムで観ていなかったため、改めて観るとこれが
これが、もう感激しまくりでありました。構造的には、ダメ男の親分が悪知恵ばかり働かせて有能でキレ者のツワモノの子分たちを
唆し互いに戦わせ、自分は高みの見物で漁夫の利を得るといった内容。なんでこんなカラクリに一流ヤクザの彼らがダマされ血で血を
洗う惨劇を生んでしまうのかなーと目をおおいながら、改めて人間の欲望の深さや富や権力を手にした者の愚かさを痛感したので
あります。つまり、人との絆や信頼関係の成立しない世界では猜疑心が義理や人情を圧迫してしまうのだと思った次第。悲しき
かなー。
そんな中でも主演の菅原文太はアウトローで仁義を重んじ、無用な戦いはせず、兄弟と認めた人に命がけで義理を通すカッコ良すぎる
男なのだ。その他、かつてのスター俳優が勢ぞろいした本シリーズは、確かに暴力をテーマにした映画だが、見ごたえタップリ、
しっかり楽しませていただいた。
前置きが長くなったが、これも本作「ベルベット・レイン」を紹介するための序章。こちらは香港版「仁義なき戦い」だ。
黒社会のボス、ホン(アンディ・ラウ)と彼を無私無欲で支え崇拝するレフティ(ジャッキー・チュン)。2人はチンピラ時代からの
関係だ。冷静沈着で知能派のホンと冷酷無比で短気、あまりものを考えないで行動する問題児のレフティ、2人は対称的な性格だ。
そんな折、ホンの暗殺計画の噂が流れ、配下のボスたちは誰が黒幕か互いに牽制し警戒する。刺客に選ばれたのはペイペイヤクザの
イック(ショーン・ユー)とターボ(エディソン・チャン)。こちらもイックを兄貴と慕うターボ、力関係はハッキリしているが、
2人の間には誰も入る隙間のない深い友情と絆で結ばれている。
「仁義なき戦い」同様、凄惨な殺し合いが賑やかな香港のど真ん中で展開されていくのだが……。作中、ずっと2組の兄弟たちの人生
が交互に描かれていき、最後に見事な結末へと収斂していく。ううーん、ダマされた。黒社会に咲いた儚くも気高い男たちの深い友情
を、香港映画界の世代の違うトップスターたちが熱演する。
大ヒットした「インファナル・アフェア」のアンディ・ラウとここのところ歌手活動で目立っていたジャッキー・チュンがトップ
スターの貫禄を見せ付け、やはり「インファナル・アフェア」でブレイクした2人(ショーンとエディソン)を迎え、
「インファナル…」さながらの緊張感と練った脚本で魅了する。
監督は本作がメジャー映画デビューとなるウォン・ジンポー。
*10月8日より シネ・リーブル池袋他にて公開予定