ブラック・ダリア
★★☆ 松村清志
ブライアン・デ・パルマだからこんなものだろうと予想していたら、やはりその通りであったといおうか。無難にまとめてはいるもの
の満足とまではいかなかった。僕敵にはやはり当初の企画通りデビット・フィンチャー監督によってモノクロで3時間ほどの作品を観て
みたかったという思いが拭いきれない。
ヨハンセンの腰上あたりに「B・D」の文字を刻んでおというアイデアには感心した。彼女をかって虐げた男の頭文字であるのだが、
それはブラック・ダリアの頭文字でもあり、ブライアン・デ・パルマの頭文字でもある。観客をヨハンセンがブラック・ダリア事件と
深く関わっているのではないかとミス・リードしつつ、作家デ・パルマのサインともなっている。暴走しまくりだった「ファム・
ファタール」(02)などよりはずっと制御されたオーソドックスな仕上がりとなっているが、矢張りデ・パルマ・タッチは随所に刻印され
ている。
デ・パルマのフィルモグラフィの中では「アンタッチャブル」(87に最も近いタイプの作品ともいえようが「アンタッチャブル」ほどの
派手な銃撃戦もなければ、人物の善悪のメリハリもなく、40年代ハードボイルド映画のような込みいつた物語がナレーショナとともに
進行していくという展開に、エンターティンメントをもとめてきた一般観客がついて来られるかは、いささか気がかりだ。
マデリンという女の名前からすぐさま「めまい」(58)を連想し、デ・パルマにこそふさわしい原作であったと語っている評論かもいる
が、僕はそうは思わない。で・パルマでなくてもよかったと思う。ウイリアム・フインレイの登場シーンにしても、しょせんデ・
パルマニアンの狭いサークル内で盛り上がっているだけのものではあるまいか。
それと、やはりヒラリー・スワンクはミス・キャストであったと思った。エリザベス・ショートにもミア・カーシュナーにも似てない
し、ハートネットが夢中になるほどのいい女とも思えない。レスビアン・バーに出入りするという設定だからオトコ女の彼女には
ふさわしいともいえようが、僕は彼女がハートネットとボクシングをやり出すのではないかとハラハラしてしまった。月並みでも
カーシュナーの1人2役で魅せて欲しかった。
レスビアン・バーでのソング&ダンス・シーンにしても、バスビー・ハークレーを意識するのなら、もっとコテコテにやって
欲しかった。かってのケン・ラッセルばりに悪ノリしてもよかったのてせはないか。いささか全体的におとなしすぎるのだ。エロと
デカダンが不足である。これならR-15にするほどの物でも有るまい。悪い出来ではない。ただ期待が大きすぎたのか、満足は
できなかった。やはりフィンチャーかいっそデビット・リンチあたりに手掛けて欲しかった。
日比谷スカラ座他にてロードショー中
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