父親たちの星条旗 ★★★☆ 松村清志
本編終了後につけくわえられている「硫黄島からの手紙」の予告編は本格的で勇壮な戦争映画という印象であったが、本作は以外
名ほどに淡々としたしあがりだ。予告編までセットで観終わったあとに思ったのは、タランティーノの「キル・ビル」「〜VOL.2」
(03〜04)のようなループとなる2部作を意図しているのかということであった。イーストウッドは゛硫黄島2部作゛を先行するアラン・
ドワン監督「硫黄島の砂」(49)や、スピルバーグの「プライベート・ライアン」(98)、テレニス・マリックの「シン・レッド・ライン」
へのアンサーである以上に、タランティーノ「キル・ビル」2部作へのアンサーとしようとしているのではないかと感じてしまった。
奇説・珍説といわれてしまうのだろうか。だが、イーストウッド作品としてはこれまでにないほどの時間解体ぶりや、むしろ本当の戦争
はパート2で本格的に展開するのではないかと思わせるあたりや、アメリカ人は生きて英雄にまつりあげられ、日本人は死して英雄となる
2作を照応関係で描こうとしているのではないかと思わせるあたりや、予告編のみでも感じ取れる色調や語り口を変化させようとしている
あたりなど、どうも「キル・ビル」2部作っぽいのである。そもそも「パルプ・フイクション」(94)がカンヌ・グランプリを受賞したとき
の審査委員長はイースト・ウッドであったのだから、イーストウッドがタランティーノを意識していないわけはないだろう。
冒険小説、ミステリー、ジャズなど自身の好きなものにひたった。趣味的映画作りでもイーストウッドはタランティーノの大先輩で
あり、2人ともディレクターである以上にディレッタントでもある。どちらも本質的にはB丘的な職人でもあり、タラ坊が2本まとめて
同時撮影するのなら俺も一ちょやったるかい、というのが本音の所にあったのではあるまいか。
作品自体に言及する前に、すでにここまで書いてきてしまったが、批評のようなものはすでにいくつも出ているので、、僕としては特に
それに付け加えるよりも、今回は作品評は保留しておいて、「硫黄島からの手紙」公開後に2作まとめて語ってみたいと思っており、
タランティーノへのアンサー説を提示することにとどめておこう。
むろん、優れた映画である。ただ、スゴイという形容にはふさわしくない、静かな映画であると思う。残酷描写も「プライベート・
ライアン」などよりずっと抑圧されている。この作品1本の印象をまとめてみれば大人の「プライベート・ライアン」であり、大衆的な
「シン・レッド・ライン」といつた所か。イーストウッド自身の作曲によるピアノ・ソロのように静かに心にしみ入ってくるのだ。
丸の内ピカデリー他にて全国ロードショー中
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