問題集の答えを友達に借り、テスト前で長蛇の列と化したコピー機の列に並んでいた。

休み時間は残り5分。この列の感じだと時間内にコピーは出来そうにもない。
このままあきらめて帰ろうかなあと思ってチラッと後ろを見たら、知り合いの先輩がやってきた。

「あ、こんにちわ〜」
「チャオ〜♪」

この先輩は、3年生では珍しい理系クラスの人で、のどかな田舎町の出身。
町民には『T町の神童』とまで言わしめた人物である。
しかし栄華というのは永く続かないもので、受験シーズン真っ只中の現在、理系なのに数学系をニガテとしている…。



「あのね、私この前名古屋に行ってきたの」


「ええっ!?何でまた…」


【参考】


「いや、あのね、受験よ受験。私立だけどっ」

「ええ〜、受験って名古屋の大学行くんすか?」

「うん、私どうしても名古屋行きたいのよね〜


(初耳だ…)


名古屋…。一体名古屋には何があるというのだろうか。
ファーストインスピレーションで頭に浮かんだ光景は、
中日ドラゴンズ金のしゃちほこういろうという文字(形は知らない)だけだ。



「な、名古屋ってアレじゃないっすか。結婚とかめちゃくちゃ派手じゃないっすか?」


とりあえずありったけの名古屋知識で話を繋いだ。


「いや、あたしゃ福島人だからそんな派手なコトはしないよっ(笑)」

「ほぉほぉ…」

「それにね…」

「ん!?」


「あたし国際結婚したいと思ってるし♪」



「はい!?」




正直、同世代で国際結婚を強く望んでいる人間を初めて見た瞬間だった。




「あ、そろそろチャイム鳴るからあたしやっぱ帰るわー」

「あ、じゃあ俺ももう帰ります…」




そうして何事も無く話は終わった。



一体彼女をこれほどまでに掻き立てる名古屋とは、国際結婚とは一体何なのか。

そして、彼女は名古屋と国際結婚のどこに強い影響を受けたのか。

というかこの人は、元・神童は、この後どうなって行くのだろうか…。



教室に帰っていく彼女の背中は名古屋への期待感に満ち溢れていた。



深く考えさせられた瞬間であった。