北京語言大学漢語学院漢語言専攻本科生編入・卒業体験について

   Profile 2002年8月2005年2(本科卒業)
「『社会人』に一休み、中国留学してみれば」著者
                                  林屋 啓子

北京語言大学 漢語学院漢語言専業 漢語言方向 本科生卒業

  卒業論文テーマ                   「中国の新聞の国際ニュースにおける感情表現」 

 北京語言大学本科の状況です。ただ私の在学時も小さな制度の変更は不定期に行われていたので、あくまでも参考として事前にご確認下さい。また以下の内容は基本的に全て2年生後期以降の状況です。1年生はかなり違うと思いますのでご注意下さい。 

● 入学時の編入について

● 入寮について

       「漢語進修生」から「本科生」への転向について

       授業について

       テストについて

       卒業論文について

       学生同士の交流について

       中国人との交流について

       余暇の過ごし方について

       卒業後の進路について

 
 
  
       「本科(学部)」入学時の編入について

中国は2学期制で通常は秋から始まるのですが、語言大学では春期(2月下旬頃~6月下旬頃)と秋期(9月上旬頃~1月上旬頃)のどちらでも入学が可能です。「本科生」と「漢語進修生」は同じクラスで授業を受けるので、どちらも入学時にクラス分け試験に参加します。内容はHSK試験初中級の縮小版らしく、科目は「聴力理解(ヒアリング)」、「語法結構(文法)」、「閲読理解(読解)」、「総合填空(総合穴埋め)」の4つです。

クラス分け試験の結果によって、1年生前期から2年生後期の4段階にレベル分けされます。人数にもよると思いますが、初学者以外は基本的に既存のクラスに編入される形になります。また、卒業に必要な単位数の関係上、編入可能な学年は2年生後期が最高です。つまり2年生後期からスタートできれば、最短2年半で本科を卒業することができます。私は秋に留学を始めましたが、2年生後期に編入されたので「春期生」となりました。編入されたクラスのレベルが合わないと思えば、1週間以内に留学生担当の先生に申し出て変更してもらいます。ただ試験結果が出ているので、上のクラスへの変更は難しいと思われます。

 

        入寮について

寮の総合的な管理事務所は学生寮の1号楼にあるのですが、寮に入るときは通常入りたい寮の「服務台(寮入口のカウンター)」で直接申し込みます。寮によって設備や料金、条件、サービス等が異なります。決める前に実際に部屋を見せてもらったり、またルームメイトの国籍など希望があれば言ってみて下さい。条件に合う部屋があれば、希望を聞いてもらえます。

もしも言葉が分からなくても、日本人ということが分かれば、寮の管理人が日本人寮生を連れてきて通訳を頼んでくれるだろうと思います。中国語では筆談という手もありますし、大学には日本人学生が多いので、言葉の点はそれほど心配しなくても何とかなるものです。

寮には机や衣装ダンス、ベッド、テレビ、暖房器具などが備え付けてあり、寝具や魔法瓶、洗面器が貸し出されます。私の最初に暮らした寮は一番安かったので以上の設備でしたが、途中で引っ越した部屋にはエアコンと小さな冷蔵庫も付いていました。台所やトイレ、シャワーは共同で、共同の有料洗濯機があります。値段の高い寮になると、各部屋に水回りの設備が整っていたり、お掃除のサービスもありました。ただ最近は寮の建て替えと高層化が進んでいるので、寮ごとの差も徐々に小さくなっていくかもしれません。

なお、授業開始ぎりぎりに渡航すると、空き部屋が少なくて希望の寮に入れなかったり、新生活を開始するのがあわただしかったりするので、可能であれば少し余裕を持った渡航をおすすめします。ただあまり早いと寮の受け入れ準備ができていない場合もあるかもしれませんので、時期が大きくずれるようであれば事前に学校に問い合わせてみて下さい。

 

       「漢語進修生」から「本科生」への転向について

「漢語進修生」と「本科生」の授業内容は同じなので、「漢語進修生」で入学しても3年生で申請すれば「本科生」への変更が可能です。ただ授業選択時に単位数が本科生と同じ(選択可能単位数の上限まで選択する)になるように注意して下さい。

 

       授業について

授業は1科目ほぼ2時間(間に10分の休憩を挟む)で、午前2科目(8:009:5010:1012:00)、午後2科目(14:0015:5016: 0017:50)が行われます。必修科目は「総合」と「口語」で、それ以外は選択科目の中から自由に選択できます。選択科目は「新聞閲読」、「読解」、「翻訳」、「作文」、「中国国情」、「地理」など様々です。ただ定員になると選択できない場合もあるので、授業登録は早めに行うことをおすすめします。

 3年生になると、「言語」、「経済貿易」、「翻訳」、「文化」の専攻に分かれ、専攻によって選択科目も異なります。

 選択可能単位の上限を超えて、もしくは専攻外の授業を聴講したい場合は「傍聴」という制度があります。これは一定の授業料を支払って、講義を聞く権利を得るもので単位には認められません。けれども専攻外の授業を受講することで、語彙力に幅が出たり、新しい友人ができるというメリットがあります。

 履修は半年ごとで、学期末に進級の可否が決まり、落とした場合は半年間履修しなおしなのですが、授業は基本的に1年単位です。つまり単位を落とさなければ、カリキュラムは1年分通しで、先生やクラスメート、教科書などは基本的に変更ありません。

 語言大学は外国人への中国語教育を専門(教科書や、HSKテストも作成しています。)としているため、基本的にレベル分けが細かく、先生の専門性も高いと言えます。また学年が上がるに従って、授業内容も高度になり、宿題や予習にもかなりの時間を費やす必要があります。特に高学年では卒業を目指す学生の割合が高くなるので、授業の雰囲気も比較的良好です。現在の社会問題などを題材にした討論なども多いので、授業に積極的に参加すれば、より有意義に学べます。

語言大学に来る学生は様々で、別の大学で専門の勉強をするために一定の中国語を学ぶ国費留学生、1年程度の語学留学で来た私費留学生、卒業を目指す本科生などがいます。そのため、低学年では学生の国籍はとりどりですが、学年が上がるに連れ、語言大学の学位を取得しようとする韓国人や東南アジアの華僑およびその子女が多くなります。授業にもよりますが、「総合」と呼ばれる必修科目では1クラス2025名くらいで、韓国人が圧倒的に多く、日本人は4、5名といったところです。また文化専攻は選択者が少なく、全員で10名未満でした。

 

以下に私の2年生から4年生までの時間割を掲載します。

 

2年生(20単位)

8:00~ 8:50

级汉语综合课

 

 

级汉语综合课

汉语听力口语

9:00~ 9:50

(総合課)

 

 

(総合課)

(ヒアリング、会話)

10:10~11:00

中国报刊语言基础

汉语写作基础

汉语听力口语

 

 

11:10~12:00

(新聞閲読)

(作文)

(ヒアリング、会話)

 

 

14:00~14:50

汉翻译基础

 

级汉语综合课

级汉语阅读

 

15:00~15:50

(日中翻訳)

 

(総合課)

(閲読)

 

16:00~16:50

 

 

中国报刊语言基础

 

 

17:00~17:50

 

 

(新聞閲読)

 

 

 

3年生(18単位)

8:00~ 8:50

级汉语综合课

汉翻译

 

中国报刊阅读

 

9:00~ 9:50

(総合課)

(日中翻訳)

 

(新聞閲読)

 

10:10~11:00

汉语高级口语

中国国情

级汉语综合课

汉翻译

级汉语综合课

11:10~12:00

(会話)

(中国国情)

(総合課)

(日中翻訳)

(総合課)

14:00~14:50

中国报刊阅读

 

中国当代经济

汉语高级口语

 

15:00~15:50

(新聞閲読)

 

(中国当代経済)

(会話)

 

16:00~16:50

 

 

 

 

 

17:00~17:50

 

 

 

 

 

 

4年生(16単位)

8:00~ 8:50

 

汉翻译

级汉语综合课

 

中国当代话题

9:00~ 9:50

 

(日中翻訳)

(総合課)

 

(会話)

10:10~11:00

级汉语综合课

 

 

 

级汉语综合课

11:10~12:00

(総合課)

 

 

 

(総合課)

14:00~14:50

 

中国当代话题

 

汉翻译

专题讲座语言实践

15:00~15:50

 

(会話)

 

(日中翻訳)

(各種講義と実践)

16:00~16:50

 

 

 

 

 

17:00~17:50

 

 

 

 

 

ピンク:必修科目

  黄色 :聴講科目

ブルー:選択科目

(聴講科目は、授業料を払って聴講にいくもので、単位には認められません。)

 

       テストについて

試験は科目によって1学期中に中間と期末があるもの、期末のみのもの、他にレポート等が課されるものと様々です。期末試験はほぼ1週間なので、試験中はかなりハードです。授業態度等もある程度は影響しますが、基本的に60点未満は不合格です。私達の学年では3年生のときに必修科目の「総合」が4クラスありましたが、期末テストの結果、4年生では2クラスだけになりました。救済措置である追試の有無は時期によって変更が多く、私の在学中も、追試(有料)がある時と、無条件で不合格という時がありました。不合格になると半年分を履修しなおすことになります。また欠席日数が多いと試験を受ける権利を剥奪されます。採点時のミスやえこひいきを防ぐため、最近は答案用紙の氏名部分が隠せるようになっていたり、複数の先生によるデュアルチェックが行われたりしているようです。

 

       卒業論文について

論文は論文指導の先生とマンツーマンで進めていくことになります。私の在学時は4年生後期の4ヶ月のうち、前半2ヶ月が授業、後半2ヶ月が論文執筆でしたが、期間が短すぎるとのことで、次の年から4年生後期は4ヶ月を論文執筆に当て、週3回の必修授業のみ引き続き受講するよう変更されました。論文は5000字以上(翻訳選択者を除く)、提出後に複数の教官による諮問が行われます。

先生によって指導方法もかなり異なるので、論文を指導してほしい先生が決まっていれば、早めにその先生と直接交渉してみるといいかもしれません。また論文を書く前に、国家図書館などで中国の研究者による関連論文を読み、研究の現状を知るとともに、論文の書き方などを身につけることをおすすめします。

学生によっては執筆を中国人に手伝ってもらったり、有料で執筆を依頼する人もいるようですが、普通は論文指導の先生に見抜かれるか、諮問で厳しく追及されます。

 

       学生同士の交流について

日本語を話さないように日本人の多い大学を敬遠するという話もよく聞きますが、実際に留学すると日本人が少ないために逆に付き合いが断りにくいようなこともあるようです。語言大学は日本人が多いため、気の合う友達を選んで付き合えました。

私は寮生で、最初は韓国人のルームメイトと2人部屋、途中から1人部屋に移りました。このため、中国語に慣れていないときはルームメイトと常に中国語を話す環境でしたし、途中からは1人部屋になったので、気の合う友達がよく集まってきていました。仲が良かったのは韓国人、モンゴル人、タイ人などで、中国語の語彙数が増えると深い話もできるようになり、視野を広めることもできました。

大学には外国語を学ぶ中国人学生もいるので、彼らと友達になることもできます。また日本語を学ぶ学生と勉強を教え合ったり、家庭教師を頼むことも可能です。

 

       中国人との交流について

中国の人は基本的に人懐っこいので、友達になりやすい(一般的に日本人ほど愛想が良くないので、最初は取っ付きにくいと感じるかもしれませんが)です。また一度友達になると、関係が深くなることが多い気がします。例えば、偶然出会った人と、家族同然の付き合いをするようになれるかもしれません。

留学したばかりの時期は、寮の管理人や普段よく行く店の店員などに話し掛け、徐々に慣れていくのがいいかもしれません。ある程度話せるようになると、街中でも会話のチャンスが広がります。さらに旅行で汽車などを利用すると、乗車時間が長いうえ、様々な人が乗っているので、話をするのに打って付けです。

中国の人と話す場合、時々聞かれたくない質問や日本では失礼とされる質問(年齢、収入など)を投げ掛けられて戸惑うこともあるかもしれませんが、そういう場合は「秘密だ」と言えば大丈夫です。私の経験ではよく収入について質問されました。そのような場合、給与を人民元に換算すると一様に驚かれ、「やっぱり日本人は金持ちだ」と言われますが、私はその後で例えばバス代やタクシー代、野菜、果物、外食費、家賃などがいくら掛かるかを話し、日本ではそんなに気楽に果物を買ったりタクシーに乗ったりしなかったというような具体的な例を出します。すると彼らは日本人の暮らしをより現実的に理解してくれるようになります。

また中国では戦争に関する授業や特集番組も多く、出会ってすぐに歴史認識について質問されることも時々あります。このような場合、私は自分も実際に授業や本、テレビなどで戦争について学んできたという話をし、自分の考えをありのままに話します。こういう質問をする人の多くは、戦争について日本を非難しようとしているのではなく、純粋に日本人の考えを聞きたいと思っているので、少なくとも私はこの件で嫌な思いをしたことはありません。歴史認識は難しい問題ですが、誠実に、かつ、それほど構えずに答えるのがベストだと思います。

中国では、時に騙されたり物をすられることもあるので、ある程度の警戒心は備えるようにしておいて下さい。ただ留学生は多かれ少なかれ騙されるのだと思って、少々のことなら授業料だと割り切ってしまいましょう。もしも路上などでトラブルに巻き込まれた場合は、相手や周囲を興奮させないよう冷静に対処してください。

中国の人との交流では、習慣の違いから不快な思いをする方もいるかもしれませんが、言うまでもなく中国には中国の物差しがあるのです。柔軟な感覚で、「中国の常識」を少しずつ覚えていくくらいの気分でいるといいかもしれません。

 

       余暇の過ごし方について

大学の中にはグラウンドや体育館、プール、ボウリング場、バスケットコート、バレーボールコートなどが揃っていますし、太極拳などの教室も開かれています。また、北京は首都なので、コンサートやオペラ、スポーツ競技、各種イベント、演劇、映画、美術展、様々な博物館など、催し物や施設も豊富です。

夏休み、冬休み(ともにほぼ2ヶ月間)の他に、春節(旧正月)、メーデー、国慶節(10月1日)は1週間の休みがあり、この時期は長期旅行が可能です。個人旅行にはトラブルもつきものですが、中国語と中国生活術が飛躍的に伸びると思います。また時間と拠点のある留学時代は旅行しやすいので、見所の多い中国を充分に楽しんで下さい。限られた留学期間でも、結構いろいろな場所を回ることができます。ご参考までに、私は2年半の留学期間中に、汽車と長距離バスを利用して、ハルビン、吉林、長春、承徳、大同、包頭、フフホト、五台山、太原、石家荘、泰山、上海、蘇州、杭州、黄山、桂林、陽朔、広州、深セン、香港、マカオ、昆明、大理、麗江、シーサンパンナ、成都、九寨溝、黄龍、洛陽、蘭州、敦煌、ウルムチを旅行しました。

 

       卒業後の進路について

日本の大学に復学、または編入を希望する場合は、大学によっては(少ないですが)中国の単位が承認される場合もありますので、問い合わせてみて下さい。

中国で就職する場合、社会人としての経歴がないとビザが下りにくいそうです。日本人は、日本語のできる中国人より人件費は高くても、日本の慣習に合ったビジネス上の付き合いや、日本人らしい気配りなどの能力を期待されて採用されるようです。ただ待遇や給与(元建てか円建てかなど)、職場環境などを充分に確認して下さい。

日本で就職する場合、商社やメーカー、ソフトウエア開発などの求人が多かったように思います。もちろん言葉はコミュニケーションのツールに過ぎないので、別の専門があるとさらに有利です。因みに私の場合は主にインターネットで仕事を探し、現在は中国語教材等を編集する仕事に就いています。

就職を目指す方は、自分が一定の語学力を備えて帰国したと仮定して、インターネット等で採用情報を検索してみるのも良いかもしれません。それによって、どのような職業があるのか、どのような能力が求められるのかがより具体的に把握でき、留学中の目標も設定しやすくなると思います。

 

  以上、あくまでも事務的に書きましたが、中国留学は得るものが多く、様々な交流や体験は、きっと忘れがたいものになると思います。また、外国で生活し、国籍や年齢の異なる人々と交流することによって、視野を広めることができ、多角的なものの見方が身に付きます。留学を考えている方は、とにかく一歩踏み出してみることをおすすめします。なお私自身の留学体験談は、文葉社の「『社会人』に一休み、中国留学してみれば」という書籍に詳しく綴っていますので、興味のある方は一度見てみて下さい。 

文葉社ホームページ
http://www.bunyou.co.jp/

http://www.bunyou.co.jp/shinkan.html#pekitu

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秦 佳朗
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