環監のボストン通信〜その5

クラスメートはシングルマザー

 「マジでびびりますよ。シングルマザーの多さ。クラスメートと話をしてたら、いきなり、my daughter(私の娘)が、どうしたこうした、って話になるんだよ。信じられますぅ?可愛い顔して、多分まだ10代なんじゃないかなぁ。子供はいるけど、夫はいないって。平然と話してたりする。それが、彼女だけじゃなくて、クラスメートには何人もいるんですよー。」

 

 ルームメイトのウェイン(仮名)が、学校から帰ってくるなりいきなりこう話しだす。彼女はボストンにあるComunity College に通う20歳の学生。Comunity College(コミュニティーカレッジ、コミカレって略して呼んでます。) とは、地域のための2年制大学。

 

 日本でいうと短期大学にあたるのだろうが、学生の多くが高校を卒業してすぐ入学する日本の短大と、地域の人が勉強の機会を求めいつでも入学できるコミカレでは、いくつかの点でその役割が異なっている。

 

 一つは、専門的な教育重視。コミカレでは、自然科学、社会科学の授業のほか、専門的職業のプログラムが多いのが特徴。たとえば、彼女の通うコミカレには看護学科が充実しており、そのほかにも、ビジネス、コミュニケーション、コンピューター、電気、幼児教育、行政事務、防火安全など実務的なプログラムが多い。

 

 

BUNKER.JPG - 11,011BYTES彼女の通うコミカレ。映画「Good Will Huntihg」にも出てくる。

http://www.bhcc.mass.edu/

 

 

 二つ目は、Open-Door-Policy(オープンドアーポリシー)。高校卒業の資格があれば、誰でも入学が可能であること。これは、留学生であってもある程度以上の英語能力があれば入学可能である。

 

 また、特に地域住民(コミュニティーの人々)には、4年生大学と比べ安い授業料でプログラムが提供される。学習したい意欲のある人にとっては、気軽に勉強できる、生涯教育機関といえる。実際、彼女の通うコミカレには、年齢、性別、国籍、人種の異なるありとあらゆる勉強意欲を持った人々が集まってきている。

 

 最後に、コミカレが4年制大学への編入の道の一つであること。規定のプログラムを修了すると準学士(Associate Degree)が授与され、4年制大学の3年次に編入できる。

 

 このシステムは、日本の留学生に様々なメリットがある。高校の成績がよくなかったり、英語能力が4年制大学が求める基準に達していなくても、コミカレで2年間、必死に頑張ればその成績次第で、希望大学に編入できるチャンスがあるということである。

 

 かくいうウェインも高校の成績がかんばしくなかったらしく、「こんなことなら、もっと勉強するんだったー!日本の高校の授業は日本語じゃないか!頑張れば理解できるじゃないかー!」と試験前になると叫んでいる。

 

BUNKER.JPGさて、ウェインはどこだろう?

 

 さて、冒頭の話に戻ると、その気になりさえすれば、シングルマザーであっても、勉強する機会は多く与えられているように感じる。コミカレには託児所もあるが、時には子連れで授業を受けることもある。しかし、一方、退学者が多いのも事実で、経済的な理由もその一つとなっている。比較的経済的だといわれるコミカレの授業料さえ払うことができず進学を断念することもあるのだ。

 

 ウェインと私は、現在、4階建てアパートの1つを共有している。院生といっても、日本ですでに数年の職務経験がある私は、ウェインとはずいぶん年が離れている。(実際、ウェインと私の年齢差より、彼女の母親との年齢差の方が近いと知ったときはかなりショックだったのだが。)

 

そんな彼女と暮らしていると、自分の見ている米国という世界と、彼女が見ている米国という世界がまったく異なる視点からだということに気づかされる。

 

 私の見た米国社会、彼女の見た米国社会。どちらも米国には変わらない。違って見えるのは、年齢差も理由の一つだが、コミカレでは、4年生大学では見られない現実的なアメリカの姿を見ることができるからなのだろう。

 

    Sandy in Boston

 

 

(「生活と環境」2004年1月号)