環監のボストン通信〜その4

日本と逆?〜無料の高速道路、有料の自然歩道

 1500メートル級の穏やかな山並みに、紅、橙、黄、色とりどりの木々が散りばめられている。まるで、印象派のタッチのようだ。山肌の全面が広葉樹に覆われており、鮮やかな色で構成された自然の絨毯が視界全体に広がる。山全体が色づいている。このあたりでは、9月から急激に気温が下がり、夏から一気に秋が深まる。この気候も、紅葉の美しさに一役買っているのだろう。これが、米国でも有名なニューパンプシャー州の紅葉か。なるほど、美しさにため息がでる。

 

 10月の中旬、よく晴れ渡った日に、ドライブに出かけた。目的地は、国有林公園内にあるThe Flum Gorge(フルーム渓谷)。岩盤が反り立つ小渓谷なのだが、今の時期は、その小道の周りの紅葉も見所のひとつ。ボストン市街から、片側4車線のフリーウェイ93号に入ると、ひたすら北上し、2時間半。大都市からあっという間にこの自然が楽しめるなんて、さすがに、フリーウェイの整備が整った広大な国土を持つ米国だと、同乗者もみなご満悦。それも安いガソリン代(日本の約3分の1)だ。

 

 渓谷に到着すると、広い駐車場の隣接した観光センターの建物に入り、ここから散策路が始まる。入り口にはチケット売り場がある。 ん?チケット?自然の散策に料金を取るのか?車が走る道路に料金は取られないけど、歩く道路にはお金を取るんだなぁ、と、しぶしぶ7ドル(約840円)を支払う。

 日本人の友人も、『あれ?入場料がいるんだね?』とやや驚いた様子。私と同じ感想を抱いたようだ。そういえば、春に、郊外へピクニックへ出かけたときも、こういった散策路を歩いたが、そのときも同じ位の金額を支払ったことを思い出した。

 ここへ来るまでのフリーウェイ。これは基本的には無料だ。ボストンから約250kmはなれたフルーム渓谷まで、途中1箇所だけ、料金所を通った。しかし、料金は、たった75セント(約90円)を支払っただけだ。駐車場代も無料だ。だけど、自然の散策路は、有料。なんだか、日本と逆の現象だなぁ。日本の場合は、ドライブして紅葉を楽しむためには、都会から高い高速道路料金を支払い、駐車場代を支払い、自然の散策路はたいてい無料だ。

クラスメートに尋ねてみると、米国内の他の国立公園などは、大概、入場料金が必要だとか。米国では、こういった自然に対して料金を払うシステムは確立しているらしい。

散策路の入場料金を、しぶしぶ、支払った私。しかし、よく考えると、散策路の整備にはお金がかかっているのだから、料金を支払うのは当然だ。山の中に小道を開き、整備、管理していくには当然お金がかる。通常、このような費用は、自然を管理している公共団体が支払っている。今回のフルーム渓谷は、国立なので、国が管理し、渓谷散策に支払われたお金は、ここの管理に使われ、渓谷が維持されているだろう。

現代では、自然はすでに限られた資源であり、それを維持してくには当然、費用がかかるのだ。そのことを少しでも思い出させるために、美しい紅葉に囲まれた渓谷の散策路に対して、喜んでお金を支払うのもいいだろう。それだけの価値のある素敵な光景を楽しむことができたのだから。(Sandy in Boston)

(「生活と環境」2003年11月号)