平成13年12月29日、朝比奈隆氏が逝去された。音楽を骨太に、スコアの様式感覚を大きく把握しながら、しかも美しいフレーズを奏でる、朝比奈氏の音楽はもう聴けない。確か1991年の暮れにフェスティバルで聴いた第9の3楽章、Lo stesso tempo の木管フレーズがあのようにしなやかに奏でられるのを初めて聴いた。この部分、第1バイオリンが目立つのだが、実は木管の旋律が主旋律なのである。まさに天上から奏でられるような音であった。氏はこんな音も出せたのである。
この書物を何度繰り返して読んだことか。趣味の MIDI 制作の折りはもちろん、この本とスコアと、実際の音楽を重ねてみて、スコアだけでもベートーベンの音楽が少しイメージできるようになった。
生前のインタビューで、「自分が死んだらエロイカではなく、7番の2楽章を奏でてくれと頼んである」と語っておられたのを聴いたことがある。きざな発想かも知れないが、氏の逝去のニュースを読んで、中途半端にしか完成していない7番の2楽章の MIDI ファイルを手直ししようと思った。そして何とか聴けるようなものができた。
氏のご冥福を、心から祈念いたします。